番外編
□日溜まりのような君
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『銀ちゃん待って〜!』
来た来た
『銀ちゃんってばぁ』
ププッ…
すぐには返事してやらねえよ
だってそれじゃあつまらねえだろ?
『銀ちゃ〜んっ…』
そうそう
それだよそれ
そうやって必死に追い掛けてくんのが
また可愛くて堪んねえんだよな
『銀ちゃん!』
「おっと…おい名無し子。飛び付いてきたら危ねえだろ」
『だって…名無し子が呼んでるのにお返事してくれないんだもん』
そう言って泣きそうになる名無し子を俺はなんだか満たされた気持ちで一杯になりながら思い切り抱き締めた。
「わりぃわりぃ。ちょっとあれに夢中になってて聞こえてなかった」
『あれ?』
「ああ。ほら、あそこ見てみろよ」
『わあっ!お花が沢山咲いてる〜!!』
「綺麗だろ?あれはな、松陽が名無し子が喜ぶだろうからって俺達に手伝わせて大分前に植えたんだよ」
『本当?!ありがとう銀ちゃんっ。名無し子銀ちゃんの事だぁい好き〜』
本当に嬉しそうに笑いながら俺にぷにぷにのほっぺを擦り寄せ可愛いリップ音を付けながらキスをしてくれたあと俺から離れ花壇に駆け寄る名無し子を眺めながら俺は笑みを浮かべていた。
なんだかんだで松陽が名無し子をここに連れてきてから1年とちょっとが過ぎ名無し子もここや俺達に慣れてきてくれたようでよく太陽のような笑顔を見せてくれるようになった。
俺は勿論の事寺子屋の奴ら全員名無し子にデレデレのメロメロになってしまい名無し子をアイドルのように扱ってしまっているんだからほとほと呆れちまう話だ。
多分誰が名無し子に一番甘いかって聞かれたら俺だって言える自信がある位俺は名無し子の事大好きだし名無し子も俺を慕ってくれている。
笑顔は勿論の事さっきみたいな泣き顔もまた可愛くてそれ見たさに嫌われないのを分かった上で苛めてしまうのはまあご愛嬌って事で勘弁して欲しい。
「…何1人でにやついてんだ銀時。どうせまたよからぬ妄想でもしてんだろ」
「お前は一体どんな目で俺の事見てんだ高杉。そんなんじゃねえよ」
「ふん…」
「それよりほら、見てみろよ。花が咲いたって名無し子が喜んでるぜ。かぁわいいと思わねえか?」
「全然思わない。そもそもあいつのどこが可愛いのか俺にはさっぱりだ」
そう素っ気なく俺に返事を返した高杉は再び何処かへと姿を消してしまった。
高杉は正直名無し子の事を良く思ってはいないようだ。
ああやって冷たい態度取るし名無し子の事苛めるしよ。
けど一番不思議でならないのがそれじゃあ何で松陽が名無し子の為に花を植えようと言った時誰よりも先に手を上げたのか疑問だし、それに今もそうだが高杉はいつも必ず本を読む時は名無し子が見える位置で読んでいるし本当に嫌いならそもそも視界に入れなきゃいいんじゃねえかと思っている。
高杉は悪い奴じゃねえけど時々何考えてんのかてんで分かんねえんだよな。
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