番外編

□ふさわしいのは誰?
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久々に仕事で大金を稼いだ銀時はるんるん気分で行き付けの居酒屋へ向かっていた。呑める事は勿論の事だが今日は何せ自分が恋い焦がれている名無し子と呑む約束をしているものだから機嫌がいいのも頷ける。

「うぃ〜っす!元気に生きてっかよジジイ」

「おう銀さん!俺は死んだって死なねえ男だから元気に毎日生きてらぁ!」

威勢のいい居酒屋の親父に銀時はへらりと笑ったあといつものカウンター席に座りとりあえずビールを頼みメニュー表に視線を落とした。

「いらっしゃい!」

「おう。いつものくれ」

「へい!いつもの土方スペシャルと鬼嫁ね!」

「…土方だぁ?」

親父が呼んだその名前に銀時は嫌な予感を感じつつもゆっくりとメニュー表から自分の席から1つだけ椅子を空けてカウンター席に座った男に視線を向け心底嫌そうな表情を浮かべた。

「最悪…何で多串君がここに居るんだよ」

「誰が多串だっ…てお前万屋じゃねえか。何でこんな所にいんだよ」

「そりゃあこっちの台詞だ。俺の行くとこ行くとこに現れやがってストーカーですかこら」

「あ?てめぇこそいつもいつも俺の行く先行く先現れやがって俺の事好きなんですかこら」

「何で俺がおめぇみてぇなマヨラーに惚れなきゃなんねえんだよ。ふざけんな」

「それはこっちの台詞だ。何が悲しくててめぇみてぇな天パーのストーカーなんざしなきゃなんねえんだよ。つうかやんのか?あ?」

バチバチと火花を散らしていた二人だったがそれぞれに注文した飲み物や食べ物がカウンターから差し出されたので二人はお互いに思い切りふいっと顔を逸らせグビグビと酒を飲んでいた所で再びドアが開けられたので今度こそ名無し子かと思った銀時は酒を呑みつつそちらに視線を向けたと同時に酒を思い切り吹き出してしまった。

「おい、いきなり人に酒を吹き掛けるとはどういうつもりだ銀時」

「ゲホッ…!おまっ…ヅラ!何でここに来んだよっ」

「なんでも何も俺はここの常連だからな。なあ親父」

「へい!にしても久し振りだね桂さん!」

「桂だと…?」

土方の動きが止まったその瞬間に銀時はまずいと思い咄嗟にカウンターに置かれていた輪ゴムを手に取り慌てて桂の髪の毛を2つに結わえた。

「おい銀時。お前何を…」

「馬鹿野郎!あそこに新選組の奴がいんだよっ。捕まりたくなきゃヅラ子の振りしてろ!」

「なに?助かったぞ銀時。礼を言う」

「なあ、さっき入ってきたお前。さっき親父が桂とかなんとか言ってたような気がしたが面見せてくんねえか?」

何故そんな物を持っていたのかツッコミ所満載だったが自分の隣で手早く化粧を施す桂を銀時は少しだけ冷めた視線で眺めていたが桂はそれを気にする風でもなくしれっとした態度で銀時の横から顔を覗かせた。



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