番外編

□華麗なる高杉様の1日
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私の名前は吉田名無し子。
いえ、今日は密偵名無し子と呼んで貰おうかしら。
何故って?
ふふ、それはね今日は私が普段気になっている事を調査するからよ。

「あっ、名無し子様おはようございます!そんな所で何してるっすか?」

『おはようまた子ちゃん。ううん、何でもないから気にしないで』

「そうっすか?それじゃあ私はちょっと出掛けてくるっすよ」

『うん、行ってらっしゃい』

ふう…危ない危ない。
また子ちゃんにバレる所だった。
あら、話が中途半端だったわよね。
私が気になっている事…それ即ち高杉晋助が普段どう過ごしているのか気になって気になってもう…
だって気にならない?
私が万屋へ行っている間晋助が何をしているのか。

「吉田名無し子。ぬしは一体そのような所で何をしているでござるか」

『ひっ!あ…河上さん…?』

「もしや拙者が来るのを待ち伏せていたでござるか?ぬしは可愛らしい女子でござるな」

『ちょっ…ち…違いますから顔を近付けないで下さい顔をっ!』

私がキスを迫ってくる河上さんの顔を手で押し退けている間に晋助が部屋から出てきたので私は慌てて河上さんを突き飛ばし晋助のあとをつけた。
ああ、後ろから河上さんが何か言っている気もするけど無視無視。

…成る程。晋助はいつも部屋から出たらまず会議室(?)らしき所に向かうわけね。それでその内容はなんなのかしら…やっぱりかの鬼兵隊の話合いなんだからさぞ深刻なんでしょうね。

「おはようございます晋助殿」

「ああ…おい武市。名無し子はどうした」

「名無し子様ですか?はて…私はまだお見掛けしていませんが」

「チッ…お見掛けしていませんじゃなくて毎日お見掛けしろってえ俺ぁ言っている筈だ」

「…申し訳ございません」

「申し訳ございませんで済んだら新選組なんざいらねえんだよ」

至極不機嫌になった晋助に武市さんが冷たい視線を浴びせているようだけどそこはまあ…ね?うん。
ていうかお見掛けしろって何よ。

「コホンッ…ええ、それでは本題に入りますが最近また江戸の街に過激派が出来たようで…」

「ふん…テロなんてこたぁ猿でも馬鹿でも出来る事だ。思想を語る事は簡単だがそこからどう新たな国を創っていくのか先を見越せねえ酔狂な野郎共にいちいちこっちが首突っ込んでいくまでもねえだろ」

「では私が出向かなくても?」

「構わねえだろ」

そう口端を上げながら極々真面目な事を言ってから煙管を吹かす晋助に私は思わず鼓動を高鳴らせてしまった。

ちょ…ちょっと晋助ってば格好良いじゃないの。流石鬼兵隊隊長ね。

不覚にも私がそう思っていると後ろから河上さんの気配が近付いてきたので私は咄嗟に身を隠し、河上さんが部屋に入ったのを確認してからもう一度扉から顔を覗かせた。






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