番外編
□失恋は女の糧になる
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『新八君、チャイム鳴ってるよ〜?』
万事屋で昼食の後片付けをしていた名無し子は今手が離せない為リビングに居るであろう新八にそう声を掛けたが返事が返って来なかったので首を傾げながらリビングに顔を出した。
『新八君?あ、ふふ。なんだ、寝ちゃってるのか』
昼食を食べ終え満足したのか珍しくソファの上で眠る新八と神楽、そして机に突っ伏す銀時を見ながら名無し子はクスクスと笑ってしまいタオルケットをそれぞれに掛けてやった。
『銀ちゃんまで机で寝ちゃって…今仕事中なんだって皆分かってるのかなぁ全く』
とは言いつつも微笑ましくその光景を眺めてから仕方がないと息を吐き出し玄関へ向かい扉を開けた。
が、そこに立っていたのはつい先日自分が警護して最後の最後で告白をされてしまった寺門通だったので名無し子は目を見張ってしまったあと汗を流してしまった。
いや、けどこちらが自分を知っていても向こうは男装時の吉田しか知らない訳で焦る必要もないだろうと瞬時に考えた名無し子はぎこちない笑みを浮かべてみせた。
『こ、こんにちは。貴女は確か寺門通ちゃんよね』
「私を知っているんですか?」
『当然じゃない。貴女はテレビに出てるし人気絶頂アイドルなんだから』
「…あの」
『ん?』
「私と何処かでお会いした事ありませんか?」
『えっ?!う、ううん。貴女とは初対面だけど…と…とにかくこんな所で立ち話もなんだから上がって上がって』
「はい」
上がらせたのはいいが万事屋メンバー達が昼寝をしている事を思い出した名無し子は通にここで少し待つようにとだけ言い残し慌ててリビングへ入るとぐっすりと眠ってしまっている銀時達を叩き起こし、不機嫌そうな顔を見せる銀時達にお客さんだからと厳しい口調で言ったあと通に向かって手招きをした。
『お待たせ。さあ、入って』
「はい。失礼します」
「えっ…えええ?!おつ…お…お通ちゃん?!」
「こんにちは」
「ぼっ…僕お通ちゃんのファンなんです!ぜぜ…是非握手とさ…サインをお願いしまっ…します!!」
「ふふ、いいですよ」
『こらこら新八君。お通ちゃんは依頼人として来たんだからそう困らせないの』
余程憧れのアイドルが目の前に居る事にテンションが上がってしまったのか、普段大人しい新八が少年らしく頬を真っ赤に染め、落ち着きのない様子を見せていたので名無し子は笑ってそう嗜めながら通や銀時の前にお茶を置いていった。
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