Short Sleep

□伝えたい想い
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沖田はその日上司達に無理矢理付き合わされ興味も何もない遊郭に連れて来られていた。

「お〜い沖田。お前上司が折角遊郭に連れて来てやって綺麗なお姉ちゃん達と酒呑ませてやってんのに何だそのつまんなそうな顔はよぉ」

「いや…そうは言っても俺はまだ15ですからねい。楽しめと言われても困りまさぁ」

「まあまあとっつぁん。総悟はまだガキだし勘弁してやってくれよ」

「煩えゴリラ。お前無駄にゴリラしてねえで今から動物園行ってゴリラの嫁でも探して来い」

「ゴリラじゃねぇぇぇ!俺っ、ゴリラじゃないからねぇぇぇ!!」

「チッ…煩えんだよ近藤さんはよぉ」

「ああん、トシ様素敵ぃ。ねえ、今日のこの後のお相手私を選んでよ。サービスするからぁ」

「サービス…ねぇ。ならこのマヨ丼全部食ったら考えてやらなくもねえぜ」

「くさっ!すっぱくさっ!!」

大人達のやり取りを冷めた視線で見据えていた沖田は1人だけ無愛想でにこりとも笑わない少女に目を止めじっと見据えた。

「おい総悟!15っつったらなぁ、男になんなきゃいけねえんだよ。だからお前あれ、童貞捨てる相手こん中から選べよ」

「きゃ〜!沖田さんはまだ経験ないの?なら私が初めての女になっちゃおうかな」

「私だったら優しく筆下ろししちゃうんだけどなぁ」

「とっつぁん」

「あん?なんだよ」

「俺が相手選んでいいんですかい?」

「ああいいぜ。好きな女選べ」

「そうですか。なら俺はあの子がいいでさぁ」

沖田が指差したのは先程まで見据えていた少女で指名された少女は目を見張りながら沖田を見据えた。

「おいマジかよ総悟。別に無理してそういう事しなくてもよぉ」

「無理してないでさぁ。そんじゃあんた、部屋に連れてってくれねえか?」

『…こちらです』

少女は驚きはしたもののすぐに元の無愛想に戻っており沖田は少女に案内されるまま部屋をあとにしていった。

『どうぞ。座るなり寝るなりして下さい』

「あんた名前は?」

『1度きりの相手に名前聞く意味がありますか?』

「あるぜい。大ありだ」

『あ』

沖田は少女を布団の上に組み敷きグッと顔を近付けにっと口端を上げてみせた。

「俺ぁあんたに興味持っちまったんでさぁ。だから名前教えろよ」

『興味?何で私に興味なんて…』

「何でそんなに人生諦めたような顔してんのか、何であんたみたいないい女がここにいんのか気になっちまったんでさぁ」

『ふうん…口説き文句としては悪くはないと思うけどそんなので私が落ちると思わないで。抱きたいならどうぞお好きに』

「い〜や。あんたの事は抱かねえぜぃ」

『はあ?』

「ただ俺ぁあんたの隣で寝かせて貰えればそれで十分でぃ」

そう言って少女の上からどき布団に寝転んだ沖田に少女は暫く呆気に取られてしまっていたがこの珍しい客に可笑しくなってしまいついには吹き出してしまった。

『ふっ…あはは!貴方って変な人ね』

「よく言われまさぁ」

『名無し子』

「は?」

『私の名前は名無し子よ。貴方と同じ15歳。まあよろしくしてとは言わないけどよろしく』

先程とは打って変わったように笑う名無し子という少女に沖田は不覚にも見惚れてしまい珍しく照れてしまいながら頷いた。
この少女に興味を持ったのは単に嫌になる程愛想を振り撒く遊女達とは違って媚びる事をしようとしなかったからだ。
その上遊女の癖に無愛想ときたら興味を持ってしまうのは至極当然の事ではないだろうか。
無愛想な癖に反則過ぎるその綺麗な笑顔に沖田は柄にもなくそれ以上話せなくなり少女に背を向け目を閉じた。
これが沖田と名無し子の最初の出逢いだった。





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