Short Sleep

□嘘から始まる恋
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「あ〜…くそ。やらかしちまったぜ」

新選組副長である土方十四郎は怪我を追った状態で長屋が並ぶ人気の無い路地をふらふらと歩いていた。
そもそもこんな状態になったのは過激派組織がテロ活動を行っているとの情報を掴んだ土方は一番隊を伴って組織をしょぴきに向かったのだがどさくさに紛れて沖田に“ちょっとした悪戯”をされ、避けたもののバズーカをぎりぎりに撃ち込まれそれを避けるのに集中していたら大した傷ではないもののテロ集団の攻撃をかわしきれずこうして傷を負ってしまい挙げ句の果てには沖田に置き去りにされてしまったのだ。

「あの糞餓鬼っ…絶対わざと俺を置いてったに違いねえっ。あとで絞めてやる」

そうぶつくさと文句を呟きながら土方が煙草を咥えそれに火を吐けた所で向こう側から歩いてきた女とばっちり目が合ってしまい女は目を丸くしたまま固まってしまった。

『あ…』

「あ〜…大丈夫だ。俺はこんな身なりしてるが決して怪しいもんじゃ…」

『たっ…大変!怪我をしてるじゃないですかっ。それにそんなに服もぼろぼろになってしまって…』

「いや、だから…」

『ま…まさか…』

「おい、どうした。顔が真っ青になってんぞ」

『あっ…あ…貴方…強姦を…』

「おいぃぃぃ!脚色し過ぎだろそれっ。この血はそういうんじゃないから!俺っ、後ろの純白失ってないからねぇぇぇ?!」

『そ…そうなんですか?!すっ…すみません。私はてっきり…ああ良かった』

「チッ…変な勘違いしてんじゃねえよ」

『手当てを…』

「あ?」

『とりあえず手当てしましょう。それにその格好ではいられないですよね?来て下さい』

女に手を引かれながら土方は女の家へと連れて来られてしまった。
別に聞く気はなかったが女が自分の名を名乗ってきたり色々な事を聞いてきたので土方は眉を潜めながら女を確かめるような視線で見据えた。

「…お前名無し子っていったか」

『はい。漸く話してくれましたね』

「生憎俺はそこらの優男みてえにぺらぺらお喋りするような性格してないんでな」

『ああ、人見知りなんですね。私も結構それなので良く分かります』

「…お前ずれてるって言われねえか」

『良くわかりましたね。たまに言われます』

へらへらと呑気に笑う名無し子に土方は呆れたような溜め息を吐き出し黙って傷の手当てをする名無し子の手元を眺めていた。

『あの、貴方のお名前を聞いても?』

「俺は…」

土方はそこで再び口を閉ざしてしまった。果たしてこのまま素直に自分が新選組副長の土方だと名乗ってしまっていいものだろうか。
ここら辺は例の組織が潜んでいた所だ。
無害そうに見えてもこの女はもしかしたらその組織の一員かもしれない。
そう考えた土方はもう一度名無し子の目を見据えながら素っ気なく返事を返した。





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