Short Sleep
□甘いのはお菓子より
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『こんにちは〜!銀時君いますかぁ?』
「おいおいおい。ガキじゃねえんだからその言い方はねえだろ」
『え?あはは、まあまあ。そう小さな事気にしないでよ』
「まあ別にいいけどよぉ。つうかすげえ荷物だな」
今日は自分の仕事が休みという事もあり名無し子は恋人である坂田銀時の元へ訪れて来ていた。
糖尿の気があり普段甘い物を我慢している銀時の為に週に1度はお菓子を作って銀時の元へ届けていたのだが銀時からたまには出来立てのお菓子を食べてみたいと言われた為名無し子はこうして大量の手荷物を持ってきたというわけだ。
『あはは、あれもこれも銀ちゃんに作ってあげたいなぁなんて考えてたら買い過ぎちゃって』
「マジかよ。ったくよ〜、どんだけ名無し子ちゃんは銀さんの事好きなんですかこの野郎」
口は悪くとも口元を緩ませ名無し子の手から荷物を取りリビングへ向かっていく銀時の背中を眺めながら名無し子もまた口元を綻ばせていた。
「んで今日は何作ってくれんだ」
『生クリームたっぷりのホットケーキとパフェだよ』
「そんなに甘いもん食わせて早死にさせる気かよおめぇ」
『ええ?!そんな事ないよっ。私はただ銀ちゃんを純粋に喜ばせようと…』
「プッ…ククッ…わぁかってるってんな事は。いつもありがとな名無し子」
しゅんと肩を落とした名無し子の頭を銀時は優しく撫でてやりながら目を細めた。
名無し子と出会ってこうして付き合うようになってから随分経ったがいつまでも自分の言葉に一喜一憂するこの少女に銀時は可愛い奴めと思いながら撫でていた手を止め名無し子を抱き締めた。
「なあ。甘いもん食べる前に名無し子の事食べたくなっちゃったんだけどそっち先にしねえか?」
『だっ…駄目だよ。ちゃちゃっと作ってちゃちゃっと食べちゃわないと新八君と神楽ちゃんに怒られちゃうし』
「それもそうだな。仕方ねえ、我慢するか」
『ふふ、うん。それじゃあ作っちゃうから銀ちゃんはゆっくりしててね』
「お〜」
銀時は名無し子から離れソファに腰を下ろしテーブルに無造作に置いていたジャンプを手に取りそれに視線を落とした…が、鼻唄を歌いながらエプロンをかけ作業に取り掛かり始めた名無し子のその姿をじっと見据えた。
「おい名無し子よぉ」
『ん〜?』
「エプロンっつうのはよぉ、男心そそると思わねえか?」
『そうかなぁ。主にどの辺が?』
「どの辺ってそりゃおめぇ…」
そこまで出かけそうになっていた言葉を銀時は飲み込んだ。
そもそも男にとってエプロンとは裸の上につけるものであって服の上からつけるものではないとそう思っている銀時はそれを果たして自分の事を純粋無垢な瞳で見据える名無し子に言っていいものかどうかと悩んだからだ。
まあ当然名無し子に嫌われたくはない銀時は言わない事を選んだのだが。
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