Short Sleep
□作戦は練ったもの勝ち
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『銀ちゃんこんにちわ!それから好きっ』
「あ〜はいはい、ありがとね」
『ねえ、好きなんだってば』
「へえ」
『銀ちゃんってばぁ』
万事屋に訪ねてくるなり名無し子は一直線に銀時が座るデスクに向かい、子供のように銀時の肩を揺さぶりながら挨拶のような告白を繰り返していたが、銀時はそれを軽く流していた。
それがもう日課のような光景になっているので新八と神楽は特に気にせずお茶を啜り、新八に関しては二人に視線を向け困ったような笑みを浮かべていた。
そもそもこの少女は元々万事屋の依頼人であったのだが、どうやら銀時に一目惚れをしてしまったらしく依頼が完了してもこうして毎日通っているのだ。
銀時の何がいいのかとはあえて突っ込まないがそれにしても飽きもせずまあよく続いているなとある意味で関心してしまっていた。
「名無し子おめぇな…」
『なになに?!』
「何度も言ってんだろ。俺ぁまだまだケツの青いガキには興味ねえって。俺が興味あんのは色っぽいお姉ちゃんだけだっての」
『私青くないよ?ぜんっぜんお尻青くないよ?なんなら見せてもいいし。ちょっと待って』
「ストップスト〜ップ!何見せようとしてるんですか名無し子さんっ」
『え、何って銀ちゃんに私のお尻を見て貰おうと思って』
「おめぇのケツ見た所で何とも思わねえけどな」
『あ〜!酷いよ銀ちゃん』
「名無し子〜。そんな天パーのどこがいいアルか。名無し子みたいな女ならいくらでもすぐ相手出来るのに勿体無いネ」
『どこって全部がいいの、全部が。だって銀ちゃんって格好良いんだもん〜。ていうか私のドストライク!』
そう言って輝かしいばかりの笑顔を浮かべる名無し子に神楽はさっぱり分からないといわんばかりに首を横に振り、観ていたテレビに視線を戻した。
『ああ!』
「おい。人の耳元ででっけえ声出すなよ」
『ごめん銀ちゃん。そろそろ私帰らなきゃ』
「あれ?こんなに早く帰るなんて珍しいですね。何か用事でもあるんですか?」
『用事っていうか…う〜ん…まあ色々かな』
「さては男アルね名無し子」
『あはは!それは内緒だよ。それじゃあね新八君と神楽ちゃん。それから銀ちゃんもバイバイ!大好きだよ』
「やあっと帰んのかよ。清々すらぁ」
『またそういう事言う〜』
「気を付けてけえれよ。また明日な」
名無し子に視線を向ける事なく熱心にジャンプを読んでいるもののきちんと挨拶をしてくれる銀時に名無し子はにぱぁっと効果音が付きそうな程の満面の笑みを浮かべた。
いつもいつも素っ気なく冷たい銀時だがこうして“また明日”と言ってくれるのが堪らなく嬉しかった。
鬱陶しいやら興味ないやらなんだかんだと言っても決して万事屋にもう来るなと言わないそういう銀時の何気ない優しさが大好きなのだ。
名無し子は大きく頷いたあとぶんぶんと手を振りながら万事屋をあとにしていった。
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