君を愛する
□君を誘う
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名無しが部屋で勉強をしていると自分の携帯が机の上で震えたので名無しは一度シャープペンを机に置き携帯を手に取った。
『誰だろう』
携帯の画面を見るとそこに表示されていたのが幼馴染みの名前だったので名無しは口元を緩ませながら通話ボタンを押した。
『もしもし』
〔もしもし、俺だが〕
『プッ…オレオレ詐欺じゃないんだから』
〔むっ…相変わらず失礼な奴だな〕
『あはは、ごめんごめん弦ちゃん』
今まさに通話している名無しの幼馴染みとは恐らく名前を知らない人は居ないであろう程有名なあの立海大のテニス部副部長皇帝真田弦一郎その人だった。
〔元気そうだな〕
『うん、元気だよ。弦ちゃんは?』
〔うむ、俺も変わらず元気だ。そういえば幸村が名無しに会いたがっていたぞ〕
『えっ、精ちゃんが?う〜ん…私は会うたび苛められるからあんまり会いたくな』
〔名無し、それ以上言うのは止めておけ。あとが怖いぞ〕
『え?!あ、ああうん…そうだね。本当にどこで聞かれてるか分からないもんね』
この二人がこれ程までに恐れる“精ちゃん”とは中学テニス界きってのテニスプレイヤーで神の子と呼ばれる程真田同様恐れられている幸村精市その人の事だ。
〔次会ったら一応でいいから謝っておけよ〕
『うん。五感奪われるのは勘弁だし』
〔ところで名無し〕
『ん?』
〔お前は氷帝ではテニス部のマネージャーはしないのか?〕
『冗談やめてよ。弦ちゃんも知っての通り私は超がつく程の面倒臭がりだよ?無理に決まってるじゃない』
〔だがこの間の話を聞いてる限りでは氷帝はこのままだとまずいと俺は思うのだが〕
深刻そうにそう呟く真田の言葉に名無しはこの間の氷帝部員達との出来事を思い出しながら溜め息を吐き出した。
『そんなこと言っても一応マネージャー居るみたいだしまたあんな事があったんじゃ私の身が持たないし向いてないよきっと』
〔らしくないな名無し。そんな心にもないことを言うとはたるんどるぞ〕
『ふふ、やっぱり弦ちゃんには適わないな。でも別に頼まれてる訳じゃないし少し様子見してみる事にする』
〔ああ。それでこそ俺の良く知る名無しだ〕
『ありがとう弦ちゃん』
〔うむ…ああすまん。少し長話しすぎたな〕
『ううん、大丈夫だよ』
〔また連絡する。ではな〕
『うん、じゃあまた。おやすみなさい』
〔ああ、おやすみ〕
名無しは電話が切れたのを確認したあと電話を切り、思い切り腕を伸ばしてから椅子から立ち上がると電気を消して布団に潜り込んだ。
『マネージャーかぁ…立海でも凄かったけどそれ以上の黄色い声援の中でやるなんて想像つかないな。まあやることもないんだろうけど…』
名無しは重い瞼を擦ったあとそのまま目を閉じ深い眠りにへと落ちていった。
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