番外編
□俺様流レシピ
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「飽きた」
『「「は?」」』
ディナー中跡部が突然盛大な溜め息を吐きナイフとフォークを置きながらそんな事を言ったので跡部の両親東吾と景子、そして名無しさんは目を見開き視線をそちらに移した。
「突然どうしたんだ景吾」
「そうよ。飽きたって何に飽きたの?」
『け…景吾…飽きたってもしかして私に飽きちゃったの…?』
名無しさんが目に涙を溜め始めたので跡部が慌てて隣に座る名無しさんに違うと告げようとするとそれを東吾の声によって遮られた。
「景吾!お前は私の可愛い名無しさんさんに対して何て事を言うんだ!!」
「誰があなたのですか。何度も言うように…」
「大丈夫よ名無しさんちゃん!景吾に飽きられたからってこの屋敷を出て行かなくてもいいし景吾の代わりに私と東吾が名無しさんちゃんの事可愛がってあげるから!!」
『景吾ママ…』
名無しさんが感涙しているとその横で跡部は眉間に皺を寄せ三人をジロリと睨み付けた。
「何勝手な勘違いしてるんですか二人共…違うと言っているでしょう。それに名無しさん、てめぇも早とちりしてんじゃねぇよ。誰がお前を手離すと言った」
「「違うの(か)?」」
「当然です」
『本当に…?本当に私に飽きたんじゃないの?』
「お前は馬鹿か。俺様がお前に飽きる訳がねぇと何度言わせる気だ」
跡部のその言葉に名無しさんは胸をなでおろし跡部をジッと見つめた。
『じゃあ飽きたって何に?』
「これだよこれ」
「これって…別に普通のいつも通りの料理じゃない」
「それですよ。いつも通り過ぎていい加減飽きてきました」
「ほう…お前がそんな我が儘言うなんて初めてじゃないか」
東吾と景子は目を見開きながらそんな我が儘を言う息子を見つめ名無しさんは呆れたように跡部を見つめた。
『景吾、そんな我が儘言ったら駄目じゃない。料理人さんが頑張って作ってくれた物に文句を言うなんて最低な事だよ?』
「あーん?仕方ねぇだろが。飽きたもんは飽きたんだから」
『…私、人と食べ物に感謝出来ない人って本当に嫌いなんだよね』
「なっ…お…俺様は別に感謝してねぇとは言ってねぇ」
『じゃあごめんなさいは?』
「何故謝る必要がある」
『ご・め・ん・な・さ・いは?』
名無しさんはゆっくりとした口調でにっこりと恐い位の笑顔で跡部にそう告げ跡部はそれに対し一瞬たじろぎチッと舌打ちを吐いた。
「…悪かった」
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