番外編
□許すとこうなる
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これはほんの数年前のまだ名無しさんが小学六年生の時の夏休みの時のお話。
「さあ名無しさん、見せてみろ」
『…どうしても?』
「無論だ」
「ちょっと二人共…」
部屋で正座をしながら先程からそんなやり取りをする二人に幸村は不思議そうな顔でそう声を掛けた。
「なんなのさっきからそのやり取り」
『精ちゃんは分かってない。これは私のこれからの運命を決める大事なやり取りなの』
「運命を決めるって…たかだか通信簿で?」
『たかだかなんて軽く言わないでっ』
名無しさんが幸村をキッと睨んでいる間にテーブルの下に置かれていた通信簿を真田はさっと取りだしふっと笑ってみせた。
「隙ありだな、名無しさん」
『ひっ…卑怯だよ弦ちゃん!』
「卑怯なものか。では早速見せて貰おうじゃないか」
『だ…駄目!』
名無しさんが止めるのも聞かず真田は通信簿を開き目線をゆっくりと下に下げていきピクッと肩眉をつり上がらせた。
「名無しさん…」
『な…なに…?』
「この算数の成績はなんなんだ」
『なんなんだって言われても…』
「たるんどるぞ!!」
『ひぃっ!』
「お前は毎年毎年何故こんなに算数だけが悪いんだ!」
『だって…』
「真田煩いよ。それに名無しさんが怖がってるじゃないか」
『助けて精ちゃ〜ん!』
名無しさんは涙目になりながら隣に座る幸村にガバッと抱き付きそれを受け止めた幸村はよしよしと名無しさんの頭を撫でながら真田を睨み付けた。
「お前俺の前で名無しさんを泣かせるなんていい度胸してるじゃないか」
「名無しさんを甘やかすな幸村」
「俺がいつ名無しさんを甘やかそうがお前に関係ないだろ?」
「ならばこれを見てみろ」
真田は通信簿を幸村に差し出し幸村はそれを受け取り目を滑らせていった。
「…」
「どうだ。それを見てもまだ甘やかすなどとけしからん事言うつもりか」
「名無しさん…これじゃあ俺も庇いきれないよ。お前が悪い」
『せ…精ちゃ〜ん』
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