番外編

□Like or Love
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「名無しさん〜!」


『わっ…』


部室に入った途端芥川に抱き付かれた名無しさんは少しだけバランスを崩してしまった。


『あ…危ないじゃないですかジロちゃん先輩!』


「あはは!ごめんごめん、怒らないで欲しいC」


『もう…毎日毎日これやってて飽きないんですか?』


「全然飽きないよ!」


にかっと無邪気に笑う芥川に名無しさんは呆れつつも苦笑した。


『早くアップに行かないとまた景吾に怒られますよ?』


「跡部に怒られても怖くないから平気平気!それより膝貸してよ名無しさん」


ソファをポンポンと叩きながら名無しさんに向かって笑顔を見せる芥川に名無しさんは更に溜め息を吐いた。


『あのですね、ジロちゃん先輩。マネージャーが部員をサボらせる訳ないでしょう?』


「名無しさんって本当に堅いC。いいから座ってってば」


芥川は名無しさんの手を引っ張り強引にソファに座らせると太股の上に頭を乗せ満足そうに微笑んだ。


『ちょっとジロちゃん先輩!』


「少しだけでいいから…ね?」


『もう…本当に少しだけですからね?』


「やった!」


名無しさんは嬉しそうに笑う芥川を見下ろしながらふっと口元を綻ばせた。


『そんなに寝て夜眠れなくなりません?』


「ならないよ。朝は朝、昼は昼、夜は夜できちんと寝られるC」


『ふふ、流石ジロちゃん先輩。それ特技って言ってもいいんじゃないですか?』


「ねえ名無しさん」


『はい?』


「俺の事いつまでジロちゃん先輩って呼ぶつもりなの?」


『え…いえ、だって先輩ですし』


「それにその敬語も何か嫌だな。よそよそしくて」


『そう言われても…』


困った顔をする名無しさんを見上げながら芥川はふっと微笑みそっと名無しさんの頬に触れた。


「呼んでよ名無しさん」


『せ…先輩?』


「違う違う。ジローだよ」


『だから…』


「ジロー」


『わ…分かりましたよ。じ…ジロー』


「敬語も無しだって言ったでしょ?ほら、やってみて」


『ジロー…こっ…これで満足?』


「あは!名無しさん顔すっごい真っ赤だC!かっわいい〜」


芥川に指摘され更に頬を赤く染めた名無しさんは眉間に皺を寄せながら立ち上がり芥川をきっと睨み付けた。


「その顔もいいね、名無しさん」


『いい加減にしないと怒りますよ?!』


「だ〜か〜ら、敬語無しだって言ってるでしょ?」


『…っ…ジロー!とっとと起きて部活に行きなさい!!次寝てたら本気で怒るからね?!』


名無しさんはそう芥川に怒鳴りつけると部室のドアを勢いよく開けそのまま出ていってしまった。


「ププッ…名無しさんって本当の本当に可愛いC。ああやってすぐ怒るからからかわれるって分かってないのかな」



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