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□強引にも程がある
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『おっ…大きい。馬ってこんなに大きいのね』
「ミニチュアサイズだとでも思ってたのか。ほら、乗せてやるから手ぇ出せ」
『わわっ』
ブリティッシュスタイルに着替え先に馬に乗っていた跡部に腕を引かれ名無しは恐る恐る跡部の前に乗せられ緊張した面持ちで後ろに顔を向けた。
『お…落ちない?なんか不安定なんだけど』
「なんだ。怖いのかよ」
『そそっ…そんな訳ないでしょ?!』
「クックッ…そうかよ。俺様はてっきりお前の顔が見るに耐えねえ位あんまりにも強張ってるからビビってんのかと思ったぜ」
『見るに耐えないとか失礼だよ景吾!』
「んな近くでぎゃあぎゃあ喚いてんじゃねぇ。騒がしいんだよばぁか。行くぜ」
『ひっ…!』
何の予告もなく馬を走らせた跡部に文句を言う余裕もなく名無しは顔を強張らせてしまい、それを跡部は可笑しそうに眺めていた。
「やっぱ軽井沢といったら乗馬だな。気持ちいだろ」
『ぜぜっ…全然そんな事考えてる余裕ないっ』
「クックッ…そう言うな。俺様がこうしてきちんと支えててやってんだから落ちる事なんざねえし安心してろ」
『安心してろって言ったって…』
「ふん…仕様がねえな。止めてやるか」
馬を止めた跡部は喉を鳴らしながら体を震わせる名無しを安心させるように抱き締めた。
『ちょっ…ちょっと!どさくさに紛れて何セクハラしてるのよっ』
「あーん?これのどこがセクハラなんだよ。お前が震えてるから落ち着かせてやってるだけじゃねえか」
『だからって付き合ってもない女性を抱き締めるなんてよくない事なんですけど』
「なら俺様の女になればいい。そうすりゃこうして抱き締めんのもキスすんのもそれ以上の事も飽きる程してやんだからよ」
『あの〜…その言い方じゃまるで私が景吾と付き合いたいみたいじゃない』
「みたいじゃなくてそうなんだろ?」
『誰がよ。勝手に決めつけないで欲しいわね』
「ハッ…決めつけるも何も俺様はお前に変わって事実を言ってやったまでなんだがな」
『ああはいはい。そこまで思い込み激しいともう何も言う気になれないよ。もう勝手に言ってて』
適当に自分をあしらう名無しに跡部は舌打ちを吐いたあと再び手綱を握り締め先程よりも更にゆっくりと馬を走らせ来た道を戻っていった。
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