蜜より甘く
□scene6
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「はいは〜い!全員注目して下さぁい」
「注目も何も最初から見てるアル」
『プッ…確かに神楽ちゃんの言う通りかも』
「はいそこ笑わな〜い!次笑ったら貴女は天パーの呪いにかけられて天パーになりますよ〜」
「なんですかそれ。アホな事言わないで下さいよ」
高杉から何とか了承を得た名無し子は翌日早速万事屋に訪れ働く旨を銀時に伝えるとそれを聞いた銀時はにんまりと嬉しそうな笑みを浮かべ、名無し子の頭をわしゃわしゃと撫でながら神楽と新八にもいち早く伝えなくてはと思い今に至るというわけだ。
「で、大事な話って何なんですか?わざわざ電話掛けてきてこんなに早く呼び出されたんですから下らない事だったら怒りますよ」
「そうアルよ。いつもより早く起きてやったんだから下らない事だったらお腹下るように思い切りパンチするからな」
「全然下らなくなんかねえぜ。それにお前ら何で名無し子がこんな朝早くここに来てんのか分かんねえのかよ」
「どうせ銀さんが無理行って早く来させたんでしょ」
「あ〜あ。名無し子も可哀想アル。こんな不愉快な天パーに朝早く呼び出されて…」
「ねえ!お前らの中での銀さんってどうなってんの?!どんな人間性になってんのぉぉぉぉ?!」
『あはは、相変わらず賑やかだねここは』
名無し子の為に集まって貰ったと言っても過言ではないのにその張本人ときたら呑気にも定春を撫でながら笑っており、そんな名無し子を銀時は恨めしそうに見据えた。
「おめぇな…誰の為に集まって貰ったと思ってんだ」
『それを言うならいつ私が集めてって銀ちゃんに頼んだって言うのよ』
「おいおい名無し子ちゃんよぉ。銀ちゃん大好き〜って言いながら俺の言う事なら何でも聞いてたあの可愛い名無し子ちゃんは一体全体何処いっちまったんだ?」
『いつの話してるのよ。私だってもういい大人なんだからいつまでも素直にはいはい言う事聞くわけないでしょ?あ、でも銀ちゃんが大好きなのは変わらないけどね』
「は?え、まじで?それまじですか。やべっ、銀さんちょっとときめいちゃったな」
本当に照れてしまったのか銀時は頬を少しだけ赤く染めながらしどろもどろになってしまい、そんな銀時にクスクスと笑いつつも名無し子は新八と神楽の前に立ち手を差し出した。
「え、名無し子さん?」
『改めてよろしくの意を込めて握手させて貰おうと思って。今日から万事屋で働かせて貰う事になった吉田名無し子です。よろしくね、新八君と神楽ちゃん』
「ほ…本当アルか?!名無し子も万屋で働いてくれるアルか?!」
『うん!』
「たっ…助かります名無し子さん!名無し子さんが居てくれるなら万事屋は安泰ですね。こちらこそよろしくお願いしますっ」
『ふふ、うん。よろしく二人共』
「あれ?ちょっと待ってちょっと待って。ここのリーダーである俺を差し置いて何勝手に自己紹介とか楽しくやっちゃってんの?」
『ごめんごめん銀ちゃん。今日からよろしくお願いしますね、坂田銀時さん』
悪戯っ子のような笑みを浮かべながら自分に手を差し出してくる名無し子に銀時もつられて笑ってしまいながらも手を握り返した。
まさか自分の誘いに名無し子が応じてくれるとは思っていなかったし何より昔のようにこれからは名無し子と一緒に過ごせると思うとこんなにも胸に嬉しさが込み上げてくる。
それに一緒に居さえすれば名無し子が今何処に住んでいるという事や例の“あの日”の事も話してくれるかもしれない。
あわよくば“兄”から“男”として自分を見てくれるようになってくれるかもしれないと僅かながら期待もしてしまっているが何せ相手はこの名無し子だ。
惚れた腫れただの騒ぐ前に果たして自分のこの想いに気付くかどうかが問題なのだが。
そんな事を思いながら手を握ったまま銀時がじっと名無し子を見つめているとそれに気付いた名無し子が心配そうに自分の顔を覗き込んできたので銀時は安心させるように口元に笑みを浮かべ頭を撫でてやった。
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