東方幽燈園

□始まりの終わり
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強者が戦い合うと戦いは長くはならないとは言うが、ここには圧倒的な差もあった。

三分もしない間に損害もなく二人のフランが倒されて霧になったのだから。

「苦労しないのはいいが、こんなに楽だと少しあれだな」

雪弥が地面に刺さっている鎌を引き抜いて残ったフランに歩み寄る。

そのフランの顔を見て雪弥は動きがピタッと止まった。
ーーフランが笑っているのだ。

「フフフフ・・・アハハハハハハハッ!!」

フランの笑え声が響き渡り、辺りに静寂が訪れる。

「あなた達面白いね! 遊んでも全然壊れないなんて!」

「末恐ろしい子だ。 まだまだ元気そうで」

「うん! まだまだ元気だよ! だからーー一緒に遊ぼうよ?」

フランを倒されたフランの赤い霧を吸い込み、並居る中から雪弥だけをじっと見据えた。
レミリアの方のフランも同じ様に赤い霧を吸い込んでいた。

「・・・厄介なのに目を付けられた。 霊夢、美鈴、狙われない様に援護頼むよ」

雪弥は鎌を背に掛けてロングライフルをバラして二丁を両手に持った。

フランが踏み込むとまばたきをする暇もない速度で雪弥の前に現れた。

「ッ!?」

頭を咄嗟にずらして回避するとそのままその方向にステップする。
フランはその着地の時を狙って瞬間的に移動して蹴りを加えた。

腕を交差させてフランの蹴りを防ぐと骨がミシミシッと鳴り、雪弥の体が後ろに吹き飛んだ。
すぐに足から着地をして地面をズリながら前を見ると既にフランの姿は無かった。

危険を察知して後ろに目をやると拳を振り下ろしているフランの姿があった。
腕を後ろに出そうとするが動かず、拳を諸に受けて吹き飛ばされた。

「なっ・・・!」

吹き飛ばされた雪弥はそのまま美鈴にぶつかり、二人の体が地面に転がった。

「雪弥、門番!?」

霊夢が二人の方に気を取られたその次の瞬間には霊夢の目の前にフランが居た。

(あっ、終わったーー)

「おおぉぉぉあぁぁっ!!」

凄まじいスピードで雪弥が現れてフランを飛び蹴りで吹き飛ばす。
憤怒の仮面を付けて一瞬の怒りを利用した高速の一撃は幾らフランがタフであろうと痛みは大きい。

「これは、人間の居ていい戦いじゃない」

雪弥は憤怒の仮面を外して霊夢の肩に左手を置く。
右腕は明らかにおかしな方向に曲がっていて、折れた骨が飛び出して痛々しさを顕にしていた。

「雪弥、その腕・・・!?」

「さっき気付いてね。 これじゃあ使い物にならない」

あくまで淡々とした雪弥に霊夢は違和感しか覚えない。
よく見れば胸の所も血で染みており、広がっていっていた。
なのに涼しい顔をしている。

「雪弥、貴方まさか痛覚をーー!」

「・・・あぁ、痛覚の境界を無くした。 今は痛みなんて分からない」

霊夢は雪弥の神経が理解出来なかった。
痛覚を遮断してまで戦うなんて普通じゃない。
どんな損傷をしても気付けない、それ故に危険しかない。

「いくら自分が死なないからって・・・! そこまでして戦うなんて馬鹿げてるわよ!!」

「仕方が無い事だ。 無理矢理にでも終わらせるにはこれしかない」

霊夢は一発ぶっ叩いてやりたくなったが、痛覚がないには意味が無い。

「この・・・バカッ!! あんたの大切な人が今のあんたを見たらどう思うかぐらい分かりなさい!」

「霊夢・・・?」

「守る為にって言われてそんな姿を見たら泣くわよ!? そこまで傷ついてまで守って貰うのなら自分でどうにかするわ!!」

そう言われた雪弥はハッとした後に悲しそうな表情をした。

「・・・・・・だが、後戻りは・・・」

「出来なくないわよ!!」

霊夢は雪弥の左手を掴むと森に走り出した。

「美鈴! 少しの間任せたわよ!!」

「わ、私一人でですか!? って言うか名前覚えてるじゃないですか!」
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