東方幽燈園

□覚める眠り
1ページ/2ページ

「う、んっ……」

僕はまた目を覚ました。
……目を覚ませた。

見たこともない天井を見た僕は周りを見渡す。
……襖に畳。
古そうな木で出来た棚。

やはり見た事もない場所。

ゆっくりと体を起こしていくーー駄目だ。
体を起こす事すら出来ない。

僕は体を這いずらせて襖の方に近付いていき、開けようとしたその時ーーいきなり襖が開いた。

「えっ」

上を見上げると見た事無い少女がたっており、此方を見下ろしていた。

「駄目じゃないですか! まともに動けもしないのに動いたら!」

「ご、ごめん……」

至極まともである。
が、こちとて状況が状況だ。

少女に引っ張られて再び布団に戻るとふぅ、と溜め息を吐いた。

「目を覚まされたのは何よりですが、早々に無茶をしないで下さい」

「……それについては詫びるけど、僕も状況が状況なんだ」

突然の発言に首をかしげる少女。
当たり前か。

「いきなりだけど、ここは何処かな?」

「ここですか? ここは冥界の白玉楼です」

今度は質問した僕の方が首をかしげる。
なんだそれは。

「冥界? 白玉楼? 聞いた事もない。 一体何県だ?」

「なにけん? けんとはなんでしょうか?」

マジで言ってるのか?
いや、多分嘘じゃないな。 
嘘を言ってる口振りじゃない。

……だから尚更僕も混乱するわけで。

「僕の中の常識が瓦解した……」

「あ、あの、もしかすると貴女は外来人……なのですか?」

「外来人?」

なんだいそれは。
外国人じゃなくてか。

僕の反応を見て頷く少女。
いや、一人で納得されても。

「少し待っていてください」

少女はそれだけ言うと部屋から出ていってしまった。
少し待って解決……する訳は無かろう。

僕は天井に目線を向けて目を瞑った。

どうやら僕は訳の分からない事に巻き込まれてる気がして堪らないよ。
あいつに話してやりたいな。

「失礼していいかしら?」

外から聞こえる先程の少女より落ち着いた声。

「えぇ、どうぞ」

特に警戒する意味もないのですぐに入ってきてもいいように促すと入ってきたのは淡い紫色の和服を身に纏い、@のような印の入った帽子を付けている女性だった。

「白玉楼の主の西行寺幽々子(さいぎょうじゆゆこ)よ。 大した持て成しも出来なくて御免なさいね」

「いえ、御構い無く。 僕の名前は燈雪弥(ともしびゆきや)です。 以後、があるか分かりませんがお見知りおきを」

「大丈夫、多分以後はあるわ」

「えっ?」

「何でもないわ。 燈さん、簡潔に話を始めるけどよろしいかしら?」

「その前に少し体を起こさせてくれませんか?」

「あら、どうしてかしら?」

「僕だけ寝ていたら失礼でしょう?」

西行寺さんは感心したような表情の後、僕に手を貸してくれた。

「まず一つとして、貴方は恐らく外来人。 この幻想郷に迷い混んできたに違いないと思うわ」

「その外来人っていうのは何なんですか? それに幻想郷というのは……」

「いきなりそんな事を言われてもよく分からないわよね。 まずは説明をしましょう」



〜少女説明中〜




〜青年理解中〜





「簡単に言えば、別次元にある別の世界からとある線に触れた事が原因でこの世界に来てしまったと」

「凄いざっくり言うとそうね。 それが一つ」

「で、幻想郷というのが絶滅しそうな妖怪を保護するようなシステムが仕掛けられている場所で本来は人間は来れないと」

「それでも稀に来てしまう時があり、その人間の事を総称して外来人と呼ぶ」

なるほどねぇ。
全然なるほどでは済まないけど。

「それはやっぱり帰れるもの何ですか?」

「えぇ、帰れるわよ。 大体三割位が」

「はい?」

「三割位が無事に帰って七割位が帰る前に死んでしまうわ」

「そんなに死ぬような要素が蔓延ってるんですか!?」

どんな無法地帯なんだこの世界は。

「妖怪相手にはビックリしないのに無害な幽霊とかに凄いビックリして、よく分からないわ」

安全の基準が全く分からない。
なんにしろ、帰れると分かっただけ儲け物だ。

「帰るにはどうすればいいのですか?」

「……残念ながら、貴方は帰る事は出来ないわ」

「……えっ?」

あまりにも突然の内容に思考が停止する。
帰れない? どうして?

「それどころか貴方。 ここに存在している事が奇跡よ」

「ど、どういう事ですか!? いる事が奇跡って……!」

「ここは冥界。 人間が来ることは今のところ出来ないはずよ。 来れるのは……幽霊と亡霊、そして死神」

えっ、えっ?
幽霊か亡霊……?

どういう事だと問いただす僕。
当たり前だ!
それじゃあまるで!!
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ