東方幽燈園

□眠りの代償
1ページ/4ページ

白玉楼・客間









「う……ん……っ……」

「あっ、目を覚ましましたか?」

最初に居た少女の声を聞きながらゆっくりと体を起こすと眼前に白いなにかが通り過ぎ、下に落ちた。
……濡れたタオル?

あぁ、そうだ。
また気を失って…… 

「気分はどうですか?」

「頭がなにかで殴られた様に痛い……」

なにこれ二日酔い?

「多分気を失う際に頭を強く打たれたからでしょう」

少女の方を向くと真っ先にその隣に浮かぶ白い人魂?に目が向いた。
いや、正確にはさっき起きた時から気付いてはいた。
だがそこを聞いている余裕が無かった。

だが、今は違う。
僕は意を決して少女に聞いてみた。

「君も……幽霊なのかい?」

「幽々子様から聞きましたか? 私は人間と幽霊のハーフなんです」

「ハーフ?」

だからか。
外見人間の少女なのに人魂が憑いてるのは。

「災難でしたね。 幽々子様からお話を聞きました」

「……そう。 自分でもイマイチ分からないよ」

「私は最初から幽霊なので分かりませんが……さぞ辛いですよね」

「なに、多分すぐに慣れてしまうよ。 そう言えば西行寺さんは何処に?」

「どうやらなにか準備があるそうで。 少し留守にしてますよ」

「なるほど」

……ここで会話が途切れる。
そりゃ当たり前だ。
お互いほぼ初対面だ。
いきなり話が弾む方がおかしい。

「あー、そうだ。 僕は燈雪弥。 君は?」

「そう言えば自己紹介がまだでしたね。 私は魂魄妖夢(こんぱくようむ)です。 どうぞ好きな様に御呼びください」

魂魄さん……違う。
妖夢さん……いや違う。

「いきなりだけどよろしくね、妖夢。 妖夢も僕の事は名前で呼んでくれ。 名字は呼ばれ慣れてない」

「分かりました、雪弥さん。 此方こそよろしくお願いします」

僕が笑みを浮かべると妖夢もニコッっと笑ってくれた。
やはり女の子には笑顔がよく似合う。

「あっ、今更ですけど服のサイズは合ってますか?」

「服? 確かにそう言われると少し大きいかも……」

「やっぱりですか。 貴女の着ていた服はボロボロだったので急遽用意した男物の寝間着に着替えさせたもので」

男物の寝間着?
……この間違いは覚えているぞ。
生前からよくあった。

「妖夢……僕の性別を勘違いしていないか?」

「えっ? 雪弥さんは女の方……えっ? 男の方?」

「僕は男だ。 一応ね」

妖夢はこのあと、顔を赤くして俯いてしまった。
次へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ