東方幽燈園

□初めての目覚め
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「……て」

んんっ……なんだ?
誰か呼んでるのか?

「雪……お……い!」

うるさ……
もう少し寝させろ……

「起きろー!!」

「ぐはっ!?」

突如来た腹部の痛みで目を覚ます。
僕の腹部には霊夢の足が乗っかっていた。

「朝から手荒いな、お前は」

「何回呼んだと思ってるの」

「三回だろ」

「最初から起きてるじゃないの」

「僕は寝起きは弱いんだ。 少しばかり気を使ってほしい。……無理か」

「無理ね」

そんな胸を張って言い切んなよ。
怒る気も失せる。

「霊夢」

「なによ」

じっと霊夢の目を見つめる。

「……夢じゃなくてよかったよ。 また夢だったらどうしようかと」

「夢だったら足蹴にされた時点で覚めてるわよ」

「あぁ、それもそうか。 ……寒っ。 霊夢、昨日の味噌汁」

「無いわ」

「無い!? あの大鍋一杯に作ったのにか!?」

「みんなが飲み干したわ。 これで我慢しなさい」

霊夢が湯飲みを渡してきた。
中はお茶かと思ったらお湯だった。

「普通お茶だろ。 お湯も好きだから良いけどさ」

「貴方お茶苦手でしょ。 気利かせてやったんだから感謝なさい」

その言葉を聞いて呆気に取られる。

「お前、覚えてたのか?」

前に夢の中で一度だけ話した覚えがある。
僕でさえうる覚えなのに。

「それ飲んだら早く起きなさい。 お互いに情報の整理をするわよ」

「あぁ、分かったから少し待て。 僕は猫舌だ」

「あんた苦手な物多いわね!」





〜青年起床中〜





「始めますか……とは言え、僕は昨日目を覚ましたばかりでよく分かっていないのが現状だ」

「知ってるわ。 だからまとめの意味を兼ねて、この人が居るわけ」

「これは、昨日の」

僕らに頭を下げてくれた人だ。
この里では地位が上の人なのだろう。

「おはようございます。 よく眠れましたか?」

「まぁ、ボチボチですね。 少し飲みすぎたかなー程度です」

「それは良かった。 ……早速ですが、お話を始めましょう」

「最近、人がいなくなると言う話ですよね」

「はい。 最近では十代〜二十代の女の方ばかりがいなくなるのです」

女の人ばかり?
どうしてそう言った事が起きるんだ?
男は無視する理由は……女の方が弱いから?

「う〜ん……それだけじゃ理由はちょっと分からないかな……」

「男が居た場合でも、一緒に連れ去られてしまう様で姿を見た者がおりません」

「……知能が高い妖怪も居るわけだよな?」

「そうね。 者によっては人間より遥かに高い知能を持つ者もいるわ」

「吸血鬼や、鬼の人拐いも考えましたが女の方ばかりが誘拐されるのが分かりませぬ」

ふむぅ……
本当に全く手掛かりが無いのか?

「そして最近平行して発生しているのが幻想郷へ幻想入りしてくる物、人間の増加よ」

「幻想入りの増加? 僕みたいな奴が増えているのか…… 関連性はありそうだな」

「……一つだけ、気になる事はあります」

『気になる事?』

「少し前に、白く顔を覆ったマスクを付けた謎の人間を見たと噂がありました」

「なに? そんな妖怪聞いた事無いわ。 新種かしら」

「……違うな」

白いマスク……ホッケーマスクかハロウィンマスクか。
……あれの模造犯ならまだありがたいんだが。

「それ、僕の思い当たる奴ならかなり最悪な者だ」

どっちにしろ、誘拐の時点で違和感は感じるが。

「思い当たる奴なら最悪なシリアルキラーだ。 それなら、居なくなった人間の無事は期待できない」

「そんな……!?」 

「まだ分からんさ。 あいつらは現実のものでは無い。 別人、模造犯ならまだ可能性もある」

「それは……何者?」

「一言で言えばーー化け物」
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