東方幽燈園

□異変
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人里・雪弥の借家







多分ここよね?
場所が分からないからわざわざ人に道を聞いてまで辿り着いた。

来いって言うなら場所くらい教えてから行きなさいよ!

「雪弥、わざわざ呼んどいて何の用よ」

雪弥は何故か上半身裸で汗だらけになっていた。

「何をしてんのよ。 傍目から見たらだいぶ怪しいわよ」

「片付けだ。 空き家を借りたから荒れ放題でな。 今の今までやっていたんだ」

「なんで帰ったかと思ったらそんな事してたわけ」

「早めに使える様にしないといけないからな」

「んで、なにか犯人の手掛かりは分かったの?」

「ああ、何となくな。 今は……そろそろ日が落ちるか。 汗を拭かないと風邪を引くな」

「なんで私を呼んだのよ。 なにか理由があるんじゃないの?」

「そう言えば夕飯食べていくか? 一人で食べる飯はなんかあれでな」

「夕飯!? 勿論食べていくわ!」

私は色々と疑問を持っていたが、夕飯の一言で全て飛んでいってしまうのであった。









〜青年調理中〜









〜現在食事中〜











「ごちそうさまぁー」

「御馳走様でした」

食事後、私はこたつに上半身を突っ伏してだらーんとしていた。
こたつは冬の聖域ね……

「雪弥、料理作るの上手いわよね」

「友人に振る舞ったり、作るの好きだからな。 通じないだろうけど調理師免許ってのも持っていたからな」

「ふーん……これから雪弥に作って貰おうかしら。 私めんどくさいし」

「そのうち住み着かれそうだからそれは勘弁してくれ」

……そう言えば近い年齢の男の人と仲良くしてるの雪弥が初めてかもしれない。

雪弥はなんか不思議な奴だ。
なんか……自然と心惹かれるような気がするのよね。

「雪弥ー」

「なんだい、霊夢?」

「食器の片付けくらい手伝うわ」

「んっ、ありがとう」

こたつから抜け出して上の食器を台所に持っていく。
雪弥は既に泡を立てて食器を洗う準備をしていた。

「流石にその服じゃやりにくいんじゃないかしら」

「君も人の事を言えないよな」

「……雪弥ってさー」

「んっ?」

「付き合っている人とかいたの?」

そんな事を聞くと珍しく雪弥が動揺して食器を落とした。

「ちょっと、泡が飛んだわよ!」

「ご、ごめん!」

夢の中で話していてもこんな反応は今まで無かった。

「……正式に付き合っていた人はいないかな。 友人以上恋人未満って感じの奴はいたけど」

「へー……なんか意外」

「自分で言うのもなんだけど、僕は付き合うってなると少し難がある性格だから」

「あー」

なんか納得した。
こいつと付き合うとなんか大変そうだわ。

「霊夢は帰るのかい? 夜ももう遅いし、泊まっていったらどうだ?」

「流石にそこまではしないわよ。 私にも仕事があるわけなのだし」

「けどーー」

「けど?」

「外、雪降ってるよ」

「嘘!?」

外を覗くと確かに雪が降ってきていた。
窓の近くに立つだけで外の冷気を感じる。

「……仕方なく泊めさせて貰おうかしら。 けして寒いのが嫌な訳じゃないわ」

「分かった分かった」

雪弥はクスクスと笑いながら洗い物を片付けてこたつを端に寄せた。

「元々家族で住んでたんだろうね。 布団は四つくらいあったよ」

「ちょっと。 それ汚れてないわよね」

「さっき外で埃を叩いて少し干しといたから多分大丈夫」

「……なんでここ空き家なのかしら。 結構物が残っているようだけど」

「さあ? 僕はもう考えるのを止めた。 あまりにも分からないから」

布団を二つ並べて毛布を上に乗せる。

「言っとくけど変な気を起こしたら殺すわよ」

「勘弁してくれ、僕にそんな度胸はない。 女の子の手に触るのも少し緊張するんだ」

「へぇー じゃあこんな感じ?」

私が雪弥の手を取ると少し体をびくっとさせ、顔を反らす。
私は思わず笑った。

「女の子みたいな外見なのに女の子が苦手って……! ふふふっ」

「一言余計だよ! あーもう……みんな可愛いから尚更なんだよ……」

雪弥は小声で何かを言った後、布団の中に潜り込んだ。
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