東方幽燈園

□赤い蝙蝠と青い影
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紅魔館・上空









・・・あれか、大きなテラスは。
見間違える方が難しい。

僕はテラスに着地し、大きなガラス扉の前に立つ。

中は明かりを消しているのか外からの確認が出来ない。
が、ここでビビっていても意味が無い。

大きな扉を開くと中から濃い赤色の瘴気が唯一の出口である扉を通って大量に外に出ていく。
くそ、前が見えない・・・って言うか目を開けていられない。

目を開けると広い部屋が目に映り、大きなベッドが一つあった。
ここは・・・寝室か?

「何用? 夜這いなら帰りなさい」

誰も居ないのかと思ったが居た様だ。
っていうか夜這いなんて誰がするか。

「いやいや、ちゃんとした来客ですよ。 紅魔館の主に用がありましてね」

「なら客人らしく玄関から入りなさい」

「失敬。 玄関が無かったもので」

嘘は言ってない。
魔理沙のマスタースパークで無くなってたしな。

僕は近くの椅子に座り、前のテーブルに腕を置く。

「んっ、これはいい椅子とテーブルで。 きちんと綺麗に使われている」

「当然。 ティータイムは美しく」

前に座った人を見て幻想郷に来て何度目か分からないが驚く。
ーーまた小さな少女だ。
この世界の立場が上なのは少女ばかりなのか?

「・・・いい心掛けで。 そのゆとりが無ければティータイムは楽しめない」

「そう言うのならゆとりを持ってはどう? 言動は落ち着いている様だけど」

「予想外で。 まさか君の様な姿とは思っても無かった」

「あんまり無礼を言うと殺すわよ」

普通なら冗談で言う様な台詞だが、彼女からは本気の殺意を感じた。
とんでもない奴だ。
こんな殺意、感じた事もない。

「殺されるつもりはサラサラないね、ちょっと時間が掛かったが本題に入ろう。 君が、この赤い霧の異変の元凶だね」

「違うと言ったらどうする?」

「君をとっ捕まえて無理矢理にでも口を割らせる」

「可愛い顔してえげつない事言うわ」

「君もだ」

即座に辺りが嫌な空気に包まれる。
いつ戦闘が始まってもおかしくない。
・・・が、彼女は攻撃を行う様な素振りを全く見せない。

成程、あくまで正当防衛を行なうつもりか。
それなら過失があっても僕の自業自得だ。

「・・・君は恐ろしいな。 純粋にそう思うよ」

「褒め言葉として受け取るわ」

「あぁ、これ以上ない褒め言葉だよ。 ・・・だから、僕は君に決闘を申し込む」

「決闘?」

初めて彼女が表情が変化し、怪訝そうな顔をする。

「決闘ならば互いに過失があっても文句はないな。 たとえ僕が過失を起こそうと」

「私に受ける義務があって?」

「無い」

両手を組み、その上に顎を載せて即答する。
事実、決闘は受ける受けないは自由だ。

「だが、紅魔館の主が僕の決闘の申し込みを拒否したと言いふらしはするかな」

多分、自分で話していてすげー爽やかにゲスな笑顔だと思う。
彼女も明らかに様子が変わっている。

決闘を拒否する=万が一でも負けたら嫌だから逃げるという謎の方式がいつから言われ始めただろうか。

「いい度胸ね。 相当な覚悟がある様で」

しかし、この手のタイプの相手には効果は高い。
・・・んまぁ挑発にもなってしまっているのだが。

「なら受けるで」

「後悔しないで貰いたいわ」

「後悔なんて僕はしないさ」

立ち上がってテラスの方に歩いて行き、ガラスの扉を閉めた瞬間に銃を二丁とも抜いて振り返る。

すると既に彼女の姿は椅子の上から消えていた。
後ろは扉、なら左側にある椅子の反対側の死角にーー!

「くっ!」

右手で攻撃を防ぐが、足が床から離れて体が吹っ飛んだ。
なんだコイツ・・・! 偽ジェイソンより力が遥かに強いぞ!

二、三回床をバウンドして壁に激突する。
ってぇ・・・!
普通の人だったらこの一撃でおしまいだ、恐ろしい。

「君は妖怪かなにかか?」

「あんなものと一緒にするな。 私は高貴な吸血鬼だ」

吸血鬼!?
道理で化け物みたいな身体能力だ。

「極限『ゼノン・アーツ』」

なら僕も全開で行かないとヤバイな。
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