東方幽燈園

□眠りの代償
3ページ/4ページ

夢世界









「…………」

……久し振りに夢、っていうかここに来たな。
僕は何故だか分からないが夢の中で誰かに呼び出される。
そんなに嫌いな訳では無いからいいんだけど。

「あっ! あんた生きてたの!?」

いきなり凄い内容をぶん投げてきたのは赤と白の改造巫女服を着た少女だ。

「勝手に人を殺すなよ」

この夢の中でいつも出会うこの少女は博霊霊夢(はくれいれいむ)とかいう名前の変わった人間だ。

「ここ最近ずっと出ないからてっきり死んだかと思ってたわ」

「なんだ、心配したか?」

「するわけないわ。 馬鹿じゃないの?」

何回も会っているため(夢の中で)、この様な辛辣な言葉は既に慣れてしまった。
いやはや、最初はあれだけ口論していたのに。

「そうだ。 最近なにか面白い事はあったか?」

「そうだ! あんたに話したい事があったのよ!」

僕と霊夢は夢の中で会っては身近にあった面白いと思った事を話し合う中になっていた。
これがこれで面白いんだな。

霊夢の話は吸血鬼だの魔法使いだのが出てくる中々に現実離れした話が多い。
それが事実なのかどうかはさておき、話してる側、聞いてる側が楽しめればよいのだ。

「ちょっと、ちゃんと話を聞いてるの!?」

「ああ、すまない。 ちょっと呆けていたよ」

思わず苦笑する。
話を聞かなくては。

霊夢ははぁっ、と溜め息を吐いた後に向かいなおしてきた。

「それはそうと、この長い間に一体なにやってて来なかったのよ。 まさか1ヶ月近く寝てない訳がないわよね?」

「どんな化け物だよ、僕は。 ……その逆だ」

「逆……あんた、一体どんな大怪我したのよ」

「僕の話を聞いてくれよ。 霊夢の話にひけを取らないレベルに現実離れした内容だ」

僕は自分の身に起きた事を霊夢に話し始めた。






〜青年説明中〜








〜少女驚愕中〜








僕の話を聞いている霊夢は気付けば神妙な顔付きになっていた。

「霊夢……? どうしたそんなシリアスそうな顔をして」

「雪弥……まさか、幻想郷に……?」

その言葉を聞いて、僕の表情も変化する。

「どうして幻想郷の名を……? いや、もしかして霊夢……」

「そこまでよ」

僕らが確信に行き着いたその時、思考を中断させるように存在し得ない別の声が響いた。

「この夢の世界もやっぱりあんたの思惑だったのね……!」

霊夢が何処かにそう言うと空間に亀裂が走り、中から何者かが姿を現した。

「なっ……!? 八雲先生!?」

「先生ぇ!?」

容姿に微妙な変化はあるものの、あれは間違いなく僕の高校の先生、八雲先生だ。

「はぁい。 しばらく振りね、燈君」

まさかとは思うが……ここにいる三人は全員知り合いという事になる。
そして……

「先生! これは一体……! まさか貴女が!」

「どう思うか、どう考えるかは貴女の勝手よ」

「紫……あんたは本当に最低ね」

「あら。 けど貴女も意外と楽しんでいたじゃない」

「……っ!」

「八雲先生」

「先生は止めなさい、燈雪弥君。 私は先生でもなんでもないわ」

「なら貴女も君付けは止めてくれ」

このまま話してても埒があかない。
それに、長引かせるのも駄目だ。
こうしてここに八雲先ーー八雲さんが出てきている。
そして霊夢の反応からしてーー

ーーここは八雲さんのテリトリーだ。

しかしどうする?
この夢から抜けるにはもとの体で目を覚ますしかない。
……が、そんな方法は大して思い付かない。

「……霊夢」

「なによ、雪弥」

「先に謝っておく、ごめん」

「なにがーー」

僕は霊夢が言葉を言い終わる前に手首を掴み、後ろ首の少し後ろに手刀をいれた。

「っ……! ゆき、や……!?」

霊夢を気絶させると、見事に予想通り霊夢の姿が薄く消えていった。

「僕の読み通りだ、これで霊夢に危険は及ばない。 今の所は」

八雲はそう、と言ったような顔をして僕に問い掛けてきた。

「彼女、貴方より強いわよ? 燈も気付いていたのではなくて?」

「気付いていますよ。 そりゃあの話が本当ならーーと言いますか間違いなく本当なんですから、聞いた話は本当でありましょう」

「ならどうして貴方が残るような真似を? 自分の気だけを失う方法もあるでしょうに」

僕は思わず苦笑してしまう。
理由が至極単純だからだ。

「彼女の方が強くても、(彼女)だからです。 男が女の子を守るのは当たり前でしょう?」

「ふふっ、うふふふふっ……やっぱり貴方は面白いわ。 もっと、面白くしてあげるわ」

「!?」

一瞬にして僕の視界が真っ暗になった。
……あるのは、ただただ無ーー

「楽しみにしてるわ。 貴方がこの幻想郷で刻んでいく足跡(れきし)をーー」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ