東方幽燈園

□蔓延る危険
2ページ/3ページ

妖夢が刀を一本振り抜いて構えると雪弥も片手で大鎌を地面に振り下ろしてから肩に担ぐ形をとった。

(雪弥さん、あんな大鎌を片手で振り回してるけどどれだけ力があるんだろう)

「いつでもどうぞ? 僕の構えはこれだ」

雪弥はそう言うが、ほぼ仁王立ちで少し左腕を開いて掌を妖夢側に向けてるだけ。
構えでもなんでもない。

「……いざ!」

妖夢が正面から飛び込むと雪弥は少し前に出していた左足で後ろに距離をとり、鎌を振り下ろした。
妖夢が少し前で止まった瞬間に雪弥が右足で一気に踏み込んで鎌を両手に持ち変える。

妖夢は鎌の柄の一撃を横に飛んで避けると即座に刀を振り込む。
勿論峰打ちだ。

中々鈍いガッ!という音が響く。
当然人体に峰打ちをして起きる音ではない。
刀は鎌の柄に当たっており、雪弥は既に妖夢に手を伸ばしていた。

妖夢はすぐに身を引き、雪弥の手首を掴む。

(すごい力……! こんなの普通の大人でも中々いない……!)

(この小さい体の何処からこんな力が出るんだ……! そこらの大人より全然強いぞ)

お互いにそのまま動きが止まり睨み合う。

「ふんっ!」

雪弥がしびれを切らして力で妖夢を押し飛ばし、後ろに下がった。

妖夢がすぐに追い掛けて刀を振り下ろす。
それを雪弥が鎌で防ぎ、柄で反撃して妖夢が防ぐ。
それを何回か繰り返した後、雪弥が鎌を支柱にして棒高跳びの様に妖夢の上を飛び越えて距離をとった。

(鎌じゃ刀相手はキツいだろ! 妖夢め、それを知って近付いてくるな!)

雪弥の大鎌では間合いを詰められた方が不利なのは明確だった。
しかし、不利のハンデが雪弥の想像以上に大きかった。

(だったら……!)

雪弥はふぅーと息を吐くと鎌の柄を左手に持ち変え、右肩をぐるぐると回した。

「はああぁっ!!」

雪弥が前に出て鎌を振り切る。
妖夢が屈んで避けるとその目の前に足が映った。

「っ……!?」

妖夢は上半身を反らして蹴りを避けると体当たりをして怯みざまに刀を叩き込む。

「その勢いで叩き付けたら流石に峰打ちでも人体に支障をきたしちゃうんじゃない?」

雪弥が柄で刀を防ぎ、至近距離で妖夢の顔をじとーっと見ていた。

「あっ、すいません! つい本気に……!?」

妖夢が口を開いたその時、雪弥の足払いで妖夢の体が宙に浮いた。

「はい、僕の勝ち」

雪弥は妖夢が倒れる前に片手で抱えあげる。

「ひ、卑怯な……!!」

「卑怯なんかじゃないよ、れっきとした戦法の一つさ。 まさか真っ正面からくる妖怪ばかりではあるまいし」

「確かにそうですけど……」

「まぁあの勢いだと危ないのは事実だし、お互い怪我しなかったし良しという事で」

雪弥が妖夢に微笑みかけると妖夢はようやく雪弥との距離の近さに気付いた。

「あ、あの……雪弥さん……そろそろ降ろして……あと顔が近いです……//」

「あぁ! ごめんごめん」
次へ
前へ  

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ