Novel
□それでもいい
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「いやー驚いた。てっきり由岐ちゃん朝まで帰らないと思ったからさぁ」
相手の男を追い出した後、未だパンツ一枚の彼氏、最上伊月をリビングの椅子に対面する形で座らせた。
恋人に浮気現場を見られたのにこの余裕の発言。その訳は前科があり、それも何度も。その度に俺が許してしまってるからだ。
「ちゃんと1時過ぎに帰るって言っただろ;もういい加減にしろよなっ」
「えー、由岐ちゃん怒ってるのー?ねぇ俺の事捨てるのー?」
「そ、そうだよ!怒ってるよ!」
「じゃあ出て行く準備しなきゃだね、あーあ、行くとこねぇや。まぁいっか適当におっさん見つけてお金もらお」
「何危ない事しようとしてんだよ!てか出て行けなんて俺は一言も言ってないぞ!」
「でも嫌なんだろ?俺が他の男とセックスすんの」
「そりゃ…嫌だよっ!でも伊月に出て行かれるのは、もっと嫌だ…」
「由岐ちゃんは本当に可愛いなぁ♡安心してよ。本当に好きなのは由岐ちゃんだけだから」
「………」
こうして今日も許してしまう俺。
普通ならこんなにすんなり話が終わる訳がないんだろうけど、伊月は平気で家を出て行こうとするんだ。でも俺は伊月の事が好きだから、離れて欲しくないから許してしまうんだ。
「由岐ちゃん、明日も学校?」
「そうだけど」
「ふーん、そう。デートしたかったなぁ」
「それなら土日のどっちかに…」
「明日がいい」
「しょうがないなぁ、学校休むよ。でもバイトは休まないからな!」
「やったぁ♪どこ行くどこ行く?由岐ちゃん愛してる♪」
伊月はニートだ。このアパートは元々俺が住んでて親からの仕送りとコンビニのバイト代でなんとか生活出来てるけど、出来れば伊月にもバイトぐらいはしてもらいたい。
って前に言ったら一晩帰って来なかったと思ったら次の日に一万円札を数枚持って帰って来た時から働けと言うのは辞めた。
そもそも伊月との出会いはあまりいいものじゃなかった。
飲み会の帰りに飲み過ぎて途中で道端で休んでいたらひょいっと現れた伊月に誘われたんだ。男に興味は無かったけど、酔った勢いと伊月の見た目の綺麗さで家に連れ込んでしまったんだ。
それだけ伊月は綺麗だ。決して男らしくないって訳じゃないけど、それなりに身長もあるのにゴツく見えないのは標準より細いせいだろう。
肩まである綺麗な金髪が揺れる度に見える無数のピアスが俺は密かに好きだ。