Novel

□それでもいい
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「ありがとうございましたー」


深夜のバイトは暇で、いつもは一人の時が多いんだけどたまに2人体制の時があって、今日とかがそうで、特に暇な日だった。


「ねぇ由岐くん、賭けをしようか」

「またですか?」

「今度は一個三百円もするデリシャスプリンを賭けようか。んー、次に入って来る客が男か女か。カップルだった場合はどっちが先に入ってくるか」

「男」

「じゃあ俺は女♪」


こうして相方とふざける余裕があるぐらい暇だ。


って言ってもバイト中にふざけるのはこの尾方夏樹さんぐらいで、他のみんなはちゃんと仕事してるんだけど…


「てか当分来ないと思うんで俺品出しやって来ます」

「えー、どこを品出しするのさ?さっきもやったからいいよ。それよりもお話してようよ」

「尾方さん、今日暇っすよね?俺帰ってもいいですか?」

「ダメ!俺がつまんなくなっちゃうじゃん!そうだ、相談に乗るよ♪ほら、由岐くんてば彼氏の事で悩んでたじゃん?」

「ああ、また浮気されましたよ。それも俺のベッドで」

「うわ、それ最悪!由岐くん見ちゃったの?」

「………」

「何で許しちゃうの?」

「好きだからですよ」

「ちょっと甘過ぎるんじゃないかなぁ?ダメな事はダメってちゃんと叱ってあげないと」

「それもそうなんですけど、もしかしたら俺にも悪いところあるかもだし」

「由岐くんて本当にお人好しだよね〜!店長に急遽シフト入れられても黙って従ってるし」

「それ今日友達にも言われましたよ。シフトは稼ぎたいしあまり気にしてませんけど」


やっぱりみんな言うことは同じだ。


そんな話をしてるととうとうお客さんが来たみたいだ。外に人影が見えてワクワクしてる尾方さんと注目してると、入って来た客の顔に俺は自然と怒りが込み上げて来た。


「あちゃー、男だったか〜。いらっしゃいませー」

「すいません、ちょっと休憩入ります」

「はぁ?!いきなりどしたの??」


賭けの事なんかどうでもよかった。今入って来た客は正に昨日の夜、正確には日付が変わってたから今日だけど、俺の部屋で、ベッドで、伊月を抱いていた浮気相手だったんだ。


俺に気付いてないみたいで、今は雑誌を手にとって読んでる。


「由岐くーん?体調悪いのー?」

「はい。お腹痛いです」

「あれー?もしかして伊月の彼氏じゃね?」

「げ;」


尾方さんが呼び止めるからーーー!レジを出たところで男がこちらに来てしまい、見つかってしまった。


うう、いかにも遊んでそうなこの男。間違いない、伊月の浮気相手だ。


「昨日はどーも。伊月元気ー?」

「元気なんじゃないですか?商品お預かりします」


何で普通に声掛けられるんだよこの男!さっさとレジ打ちして帰ってもらおう。


「てかさ、伊月っていいよな♪別れないの?別れたら俺にちょうだい」

「別れません!」

「お客様ー?こちら温めはどうされますかー?」

「尾方さん…」

「由岐くんは休憩行ってきな?後は任せてちょ」


気を使ってくれたのか俺をレジの外へ誘導して接客を始めた尾方さん。こういう気は使える人なんだよな…お言葉に甘えて逃げる事にした。


それにしてもあの男、この辺に住んでるのかな?それだったら凄く嫌だぞ;
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