Novel

□それでもいい
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家に入って伊月の靴がある事に少しホッとした。シャワーを浴びてるのか音が聞こえてきた。


「ただいまー」


一応言って中に入り部屋着に着替えてベッドに潜り込む。あー、すぐ寝れそうだ。


ウトウトと意識が飛ぶ数秒前にバタバタと伊月が近付いて来る音が聞こえた。


「由岐ちゃん帰ったの??」

「ああ、伊月もお帰り。俺ちょっと寝るから」

「どこか悪いの?」

「ちょっと頭痛がするだけ。多分寝不足なだけだから」

「そっか、遅番だったんだっけ?ご飯は食べた?薬は飲んだ?」

「食べたけど薬は飲んでないよ。てかごめん。本当ダルいんだ、寝かせて?」

「分かったー!今日は俺ずっと家に居るから何かあったら言ってね」


パタンと閉まる音にやっと休める事に安心してるとそのまますぐに眠りに入ることが出来た。


それから起きたのは夕方だった。3時間ちょっと寝たのか…さっきよりは体が楽だけど、もう一度寝なさいって言われたらすぐ寝れるぞこれ。


「ん?」


何だかふんわりといい匂いがして眠気が少し遠退いた。伊月が料理でもしてるのか?


とりあえずリビングに行って、確認してみるとやっぱりキッチンに伊月が立っていた。


「伊月が料理なんて珍しいな」

「あ!由岐ちゃんおはよー♪ほらたまには料理の才能も使ってあげないとだからさ〜。由岐ちゃんお腹空いてる?今お汁作ってたんだけど、もし食べられるならうどんも茹でちゃうよ」

「うどんか。食べたいな」

「かしこまりー♪じゃあそこに座ってちょっと待っててね♡」


また調理を再開した伊月を少し離れたリビングの椅子に座ってみてると、その手際の良さに味の期待が出来た。普段俺が作る側だったから伊月が料理できることに驚きだ。


そして出来上がったうどんは、透き通った汁で、具は小葱だけとシンプルなものだった。そして別皿でかき揚げもあった。


「どうぞ召し上がれ♪」

「うまそう!いただきます」


まずはスープを一すすり…ん?!何だこれ!凄いダシの味が効いてる!


「うま…これ何の素を使ってるの?」

「えー、素なんて入れてないよ?ちゃんとダシを取りましたー。あとかき揚げの他にチクワの磯辺揚げもあるんだよ♪食べられそうなら食べてね」

「ちょ、伊月凄くね?これ俺が作るより全然美味いよ!よく今まで俺の作ったもので我慢出来てたな」

「由岐ちゃんのご飯も美味しいよ?ただ単に俺が作るのめんどくさいからやらないだけだし、由岐ちゃん体調悪そうだったから特別だよ」

「もしかして気つかってくれたのか?」

「そりゃ恋人ですから♪」

「伊月…」


そうだ、伊月は浮気はするけどちゃんと俺の事を考えてくれる一面もあるんだ。とても優しくて、ああ付き合えて良かったと思えるぐらい幸せにしてくれる。


だから本当に不満は浮気をするところだけなんだ。


「由岐ちゃんちょっと働き過ぎなんじゃない?シフト減らさないの?」

「減らすのはキツいかな。家賃払えなくなっちゃう」

「そんなにキツいの?仕送りあるんでしょ?」

「あるけど、光熱費の分は貰ってないから。それに生活費だってあるんだ、少しでも美味しいご飯食べたいだろ?」

「食べたい!やっぱり俺も働くよ♪」

「いや、それは辞めて欲しいな;」

「大丈夫っ♪怪しい事はしないから。昼間働くよ」

「ちなみにどんな仕事?」

「カフェなんかいいな〜って思ってる♪ちょうど知り合いに誘われてるから話してみる」

「カフェか…伊月のウェイター姿似合うな♪」

「あー、何想像してるのー?由岐ちゃんてばやらしー!てか元気出たみたいだね♪良かった♪」

「ああ、うん。伊月のおかげでね。ありがと」

「いいえ〜♪由岐ちゃんの為なら〜♪」


機嫌良さそうに笑う伊月を見てるととても和んだ。こんな時がいつまでも続けばいいのに…
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