Novel
□ライバル
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朝、目が覚めるとふと味噌汁のいい匂いがした。
変だな。一人暮らしの部屋で味噌汁とか、窓開けて寝たっけ?と、近所から匂ってきてるのかと思っていたら……
「あ、春くんおはよ〜♪今日はお休みだし、もう少し寝ててもいいよー?」
「って、お前何してんの?;」
対面式のキッチンからヒョコッと顔を出してる柳原は、勝手に人んちで何かしているようだった。
「朝ごはんももう少しで出来るからそしたら起こそうかぁ?」
「朝ごはん?もしかして、この味噌汁の匂いって」
「うん。いつもベッド貸してくれるからささやかなお礼〜♡あ、食材は自分の部屋から持って来たの使ったからね」
「……」
「和と洋どっちがいいか迷ったんだけど、俺の好みで決めちゃった♪もうすぐ鮭焼けるよ〜」
俺は立ち上がり、柳原がいるキッチンを覗いて見る。
すると、本当に料理をしている柳原がいた。
てか、この部屋のキッチンって初めて使ったんじゃね?
俺は料理なんて出来ないから、ここに越して来てからは外食かコンビニの弁当ばかりの生活をしていた。
ここにきての手料理はちょっとそそられる……
とりあえず顔洗って歯を磨こう。
洗面所から戻ってみると、机の上に完璧なまでの朝食が2人分並べられていた。
白いご飯に味噌汁。ふんわり厚焼き卵と、少し焦げ目のついた焼き鮭。
ヤバイ。急にお腹すいてきた!
「コレ全部柳原が作ったの?」
「うん♪簡単なものだけど、春くんの口に合えばいいな♡」
「食っていい?」
「もちろん♪」
「いただきます」
手を合わせてニコニコ笑顔の柳原の横で温かい味噌汁を一口。
「うまい……」
「ほんと?良かったぁ〜。お味噌汁はまだおかわりあるからね♪」
「へー、お前にこんな特技があったなんてな」
「特技だなんて。親が共働きだったから全部自分でやってたら出来るようになったんだよ」
「ふーん、偉いんだな」
「ねぇねぇ、なんかこうしてると新婚みたいだね♡」
「はぁ?;」
「朝起きて一緒に朝ごはん食べてるなんてラブラブだよね♡」
「お前さぁ、そういうの言わなきゃカッコいいのにな」
「えー、だって嬉しいんだもんっ」
「こういうのやりたきゃ恋人作りゃいいだろ。そんで一緒に住めば毎日出来るじゃん」
「え!春くんがなってくれるの?!」
「なんでそうなるんだよ;」
「俺、春くんがいい!」
顔をぐいっと近付け目をキラキラさせてる柳原。こいつどこまで本気なのか分からないからなぁ;
「柳原ってさ、男が好きなのか?やたら他の奴にもくっついたりしてるけど」
「うーん、そう言われると……どうなんだろ?実は俺、人を好きになった事ってこれで2回目なんだ」
「これで2回目?;1回目は女だったのか?」
「ううん。男の子だよ〜♡小学生の時にね、助けてもらったの♡」
「じゃあ2回目は?」
「そりゃ男でしょ」
「じゃあ男が好きなんじゃん」
「えー、でも他の男の子にはドキドキしたりしないんだよぉ?」
「てかそいつんち泊まればいいじゃん。ベッド来るまで」
「やだなぁ♡もう泊まってるよぉ♡」
「……」
まさかだよな;
話の流れ的に薄々そうなのかなとは思ってたけど、これは触れるべきなのか?;
「だからね、春くんがいいの♡」
「お、お前いつから?;」
「初めて会った時から!」
嘘だろ;
全然気付かなかった;