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□対面
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はむっ
そんな擬音が似合う彼女の食事の仕方に、僕は相変わらず釘付けだった。
一生懸命、だけどどこか艶めいていて。
「…ぷは……。ご馳走さま…です」
「うん、お粗末様です」
こちらも相変わらず、自分の腹に穴をあけて、その鮮血を纏った手を与えているだけなのだけれど。
実は、密かに、理性を手放して僕の手ごと喰べてくれないかなと思ったりもしているのだけど、今はまだ、黙っておくことにしよう。
「ねえ、ミミ」
ミミ、とは彼女のあだなだ。
名字と名前の頭文字をとって、ミミ。
「…?」
何?と視線で返される。
「そろそろ僕の仲間達と会わせたいんだけど」
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「おー。随分久しぶりに感じるなァ」
「一週間だけじゃないすか、万丈さん」
「年ですかねー」
「カネキさん、こんにちはー」
「お兄ちゃんっ!久しぶり!」
「みんな、ごめんね。僕のわがまま言っちゃって」
「そんなことねぇさ。誰だってこんな大人数いたらゆっくり休養なんざ出来ねぇもんだ」
「万丈さんの言うとおりっす。それに、ホテル代出してくれたのだってカネキさんっす。俺らは全然、気にしてないっすよ」
「ねえねえお兄ちゃん!その、お兄ちゃんが連れてきた人ってどこにいるの?」
「待っててね。今連れてくるよ」
彼女を待たせている奥の部屋へと行くと、部屋の隅で小さくなっていた。
「大丈夫だよ。彼らも僕らと同じ喰種だから。…行こう?」
優しく手を取ると、伏せていた目蓋が上げられ、覗いた瞳の清廉さに胸が高鳴り、そんな自分に動揺しつつも、何事もなかったかのように元の部屋へと移動した。
「わぁ!お姉ちゃんすごくかわいい!」
ヒナミちゃんにそう言われ、オドオドする彼女が少し面白かった。
「かわいいね〜」
「カネキさん、一目惚れっすか?」
「そ、そんなんじゃないよ!ただ…放っておけなくて」
「カネキらしい理由だな!」
万丈さんが明るくそう言い、場が和む。
「あ、えと。左から、女の子がヒナミちゃん。その次の3人がジロさんとイチミくんとサンテくん。そしてあの体の大きい人が万丈さんだよ」
「あ、ありがとう…えっと、お願いします…!」
こうして初対面を終えた僕らは、少しの間談笑し、各自の部屋へと戻った。
「どうだった?」
万丈さんたちが部屋を去った後、ミミにそう訪ねると、少し興奮した様子で話し始めた。
「すごく良い人たちでよかった!!私、今までずっと一人で生きてきたからこんなに仲間が出来て本当嬉しかった…!」
珍しく満面の笑みを見せたので、こちらもつられて嬉しくなり、笑顔が浮かぶ。
「そっか。それならよかった。今日はもう疲れただろうし、早く寝た方がいいよ」
「うんっ…あの、カネキくん、ありがとう」
それだけ言って少しだけ微笑み、タタッと行ってしまった。
「…月山さんに何て言おう」
彼女を紹介したら、彼女には失礼だが僕と同じように珍味扱いされるかもしれない。
隙あらばと狙ってくる月山さんに話すのは色々避けたかったが、仲間である以上、行動してく上でバレるのは目に見えてる。
「………話すか」