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□どっちだよ!!
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「おーい、海-ウミ-〜…ったく、どこ行ったんだよ…」
廊下から愁也-シュウヤ-の声が聞こえる。
「…どうしよ…」
遡ること数10分前─…。
「わ、私、ずっと前から愁也くんのこと好きでした!つきあって下さい!!」
それは人気の少ない裏庭での出来事。
愁也が女の子に呼び出され、居ても立っても居られなくなった俺は、内緒でついてきたのだが…案の定これだ。
「愁也のやつ…ちゃんと断るだろうな…」
校舎の裏からハラハラと愁也の返答を待つ。
「あー…悪い。俺、付き合ってるやついるから」
「よっしゃ…!」
そこまではよかった。甘んじてそこまではよかったんだ。
でも、その次の光景は、許せなかった。
「お願い…!!体だけでもいいから…!」
「ちょ…」
女は涙目になってその豊満な体を押しつけるように懇願をし始めた。
「…なっ……愁也のバカぁ!!!!」
─ダッ!!
「あ、おい!海!!」
全速力で走り抜く中で、遠くから愁也の声がして、ああバレてたんだなと思った。
そして、今現在…。
「海ー?どこにいんだよー」
俺はこの空き教室から出られないで居る。
「愁也が悪い…」
そうだ。誰彼かまわずモテてしまう愁也が悪いんだ。
…あの女とはどうなったのかな。
もしかして、つき合っちゃったりしてるのかな…。
てことは、俺フられるじゃん…。
「…っ」
喉奥からせり上がる熱いものに息を詰めた瞬間─。
─ガタッ!
「うわっ!」
「なんだここ?鍵かかってるし。てか今の声海だよな…。海ー?居んだろーいい加減出てこいよー」
「愁也だ…!!」
ドンドンと扉を叩きながら問い掛ける愁也に、俺の小さな声にも気付いてくれたのだと少し安心するが、この扉を開けたらきっと、愁也はどこかに行ってしまう…。
…やだ、行かないでほしい。
気持ちはそう強く願ってるのに、実際に出てくる言葉は正反対なもので。
「あっち行け。俺に近づくな…」
「やっぱり…居んじゃねぇか。何でそんなこと言うんだよ。言っとくけど、最初から気づいてたんだからな。お前が来てたこと」
まさかはなから気づいていただなんて。
一生懸命隠れていたのが馬鹿らしく、恥ずかしく、更に口調を鋭くしてしまう。
「じゃあ、何?俺が来てなかったら、断ってなかったの?」
「んなわけねぇだろ。大体、俺たち恋人じゃんか。他のやつと付き合う気はさらさらねぇ」
「…愁也……」