main*
□#予想外の出会い
1ページ/1ページ
嫌になるほど満開な桜に、過度な期待と達成感に身を包んだ新入生に紛れ、ただ一人会場を目指す。
ヒラヒラと落ちてくる桜に、今朝の夢を思い出し、頭が痛くなるのを何とか抑え、足を早めた。
──────────
─────
─…
長い長い校長の話が終わり、ようやく式典から解放された生徒達はこれからの学校生活がかかったクラス発表を見に、玄関から続く廊下に集結する。
「─3組、か…」
僕は早々と自分のクラスを確認し、早速その教室へと向かうことにした。
「ここ…だよね」
入り口の扉の上に掲げられたクラス表示の板を確認し、手をかけた。
─ガラッ
「……」
予想通り、というかは予想以上に教室内の視線が一気に僕に集まる。
最初の内こそ戸惑っていたが、一々真に受けるのも馬鹿馬鹿しくなり、今ではこんな風に躱せ─
─ドンっ!
「わっ」
「おお、すまんのぉ〜」
…なかった。(二重の意味で)
普段通り周りの視線にも何食わぬ顔して自分の席に座るつもりが、どういうわけか後ろからぶつかってきた関西弁の男に邪魔をされてしまった。
しかし、入り口で止まっていた自分にも非が有るのでここは謝ろうと彼の方へ振り向く。
「あの、すいませ─」
「っうおぉ!えんらい可愛い子やなぁ〜!!」
…また邪魔された。
しかも今まで散々言われてきた単語を、まさかこの“男子校”で聞くことになるとは…。
補足だが、僕の進学先のこの高校、天咲[アマサキ]学園─通称天園[テンエン]は、名前のかわいらしさにそぐわず、れっきとした男子校だ。
何故男子校に通うことになったのかというと、よくある理由の一つ。
学費免除が目当てだったからだ。
何の取り柄もない僕だが、唯一勉強が得意だったのでちょっとした親孝行として受験した。
結果は主席、当然学費免除の景品が付いてきて、僕は見事目的を達成することが出来たのだ。
─と、まあそれはどっちでもいいとして。
昔からこの女顔のせいで「可愛い」と言われてきたが、こうも堂々と─しかも男子に言われたのは初めてだ。
「…あの」
「アカン!コッチ向かへんでっ///」
─照れる意味が分からない。
関西人は尚も続けた。
「なぁ、名前なんていうんや?教えてやー!なっ?」
まるで小さい子をあやすように言われ、ムッとした僕は静かに、そして不機嫌そうに答えた。
「淡瀬…天」
「てん?てんって言うんやな!…漢字でどう書くん?」
「─お天道さまの天」
そう答えると、ブホォッと吹き出して笑われた。
「お天道さまの天て…ぶはっ!かんわいーやつやなぁ!子供かいな!!」
ちなみに馬鹿にされるのも初めてだ。
完っ全にへそを曲げていると、関西人は見かねて謝ってきた。
「すまんすまん。そう拗ねんといてや。─俺は橘恭介-タチバナキョウスケ-!よろしゅー!」
あだ名とかで呼んでもええでーと言ってきたので、仕返しとばかりに、結構ですと返しておいた。
当然本人は、冷たい!!と嘆いていたが、無論無視に決まっている。
そんなこんなで入学式早々に、予想もしなかった知り合い(友達ではない)が誕生することとなった。