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□#理由
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入学からひと月経ち、学園生活も一段落した今日この頃。
僕は学費免除の手続きを済ませに生徒会室へと向かっていた。
こういう手続きはもっと早くに済ますものでは?と疑問に思うも、大して気にはしなかった。
─余談だが、実は、この学園はよくあるお金持ちの学園とは違い、庶民向けのほそぼそとした一般的な学園である。
…が、生徒の約八割が財閥の子息だったり、大手企業の社長の子供だったりと、所謂お金持ちが多い。
というのも、ここ天園は人里離れた山奥に所在する極々小さな学園である為、将来を決められた子息たちにとって格好の『逃げ場』となっているのが理由の一つである。
かくゆう天園の理事長も、世界的に有名なブランド店の跡取りだったという。
贅沢すぎる生活と、窮屈で退屈な日々に嫌気がさし、この地に逃げて持ち前の権力と資産を使ってこの学園を設立したんだそうだ。
設立以降、噂を聞きつけた子息達がそれに続き、次々と天園に転入し、理事長も同じ立場だった故に、逃げてきた子息達を総力を挙げてサポートをした。
─そんなただならぬ訳もあり、ここのセキュリティーはずば抜けて凄い。
特に学園内の生徒達の情報には細心の注意を払っている。
そんな厳重に厳重を重ねたこの学園に何故僕ごときが受験をし、入学出来たのかというと、至ってシンプル。
僕も逃げてきたのだ。
でも、子息って訳ではなく、もっと別の理由で…。
先程いった八割以外の生徒。
残りの二割の生徒達は、言わば社会から逃げてきた生徒達。
事情はそれぞれ。
かくゆう僕も、その一人。
…さて、大分現在から話が逸れたが、そろそろ戻ることにしよう。
丁度着いたことだし─。