main*
□どっちだよ!!
2ページ/2ページ
愁也said*
「…愁也……」
閉ざされた扉から聞こえる愛しい恋人の恍惚とした声に、まだ俺は嫌われてないんだと安心する。
海のことになると、途端に自分が女々しくなるのを、自分自身感じていた。
「海、早く出てこいよ。俺お前の顔見たいよ」
「……っ、愁也ぁ…!!」
─ガチャッ
施錠されていた扉が開放され、薄暗い教室の中からこちらへ駆け寄ってくる海。
─ギュウ…
「ううっ…どこにも…行かないでね」
「ははっ、こんなかわいいやつおいてどこにも行けねぇよ…」
先程のつんけんした態度と打って変わり、素直に自分の気持ちを伝え、行動してくる。
「海…」
背中に腕を回ししがみついてくる姿が愛しくて、キュッと結ばれた唇に近づくと…
「ち、近づくな!!」
「うお…海ぃ……」
案の定俺の胸を押しのけて顔を背ける海。
とてもかわいくて愛しい恋人だけど、困ったことが一つ。
海の行動が読めない。
ある日は嘘のように甘えてきたり、
ある日は別人みたいに冷たくなったり、
そのある日は色っぽく誘ってきたり…
こいつの素直になる境界と、ひた隠す境界を分けるスイッチの入るタイミングが全く読めないのだ。
「なんだよ海…キスさせろよ」
「…しない。こっちこないで」
「はいはい、分かったから。もう帰ろうぜ?おまえ捜してたらもう放課後だよ」
海は嫌なことがあるとすぐ逃げ出す。そこはいつの海によっても変わらないのだが。
でもやはり海。逃げ出すことは一緒だけど、隠れる場所は毎回違う。
正確には、その時の海によって変わる。
あからさまに見つけやすいところにいたり、はたまた全く読めない場所にいたり。
今回は後者。告白されたのは昼休みだったから…かれこれ2時間捜してたのか。
もしかして俺が馬鹿なだけなのか…?
「うん…愁也と一緒に帰る」
お、素直。
「よし、じゃあ教室に荷物取り行くぞ」
そう行ってスタスタ歩いていく。
「ま、待って!」
後ろからいきなりギュッと腕に抱きつかれ、ドキドキする。
「手…繋いでいこ?」
近づくなって言ってたのはどこのどいつだよ。という考えは微塵も浮かばず、おう、とだけ言い、指を絡めて歩き出した。
やっぱりコイツは読めない。
でも、そーゆー所が多分すごく愛しいんだろうな…。
「帰り何が食べたい?」
「食べたくないから…食べてほしい」
「は?」
「俺を食べて?愁也」
「…っ、馬鹿」
本当にコイツは読めない─。
fin*