みじかいの
□聖夜と詩人と鬼と
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クリスマスイブ前日の夕方。
皆に招待状を渡し終えた頃だった。
久しぶりに中也さんに話しかけられた。
「なぁ、椿。最近夜どこかに行ってるみたいだが、何処に行っているんだ?」
ここ最近、夜はシューベルトさんの部屋で歌の練習をしている。
歌の件はサプライズにする予定だから、話せない。
「どこだっていいだろう?」
「は?」
「中也さんだって、桜と何をしているんだい?」
「…どうでもいいだろう。」
最近は桜と一緒にいるから少し寂しいんだ。
なんて、言えるわけもなく。
「ほら、そう言う。僕だって、言えることと言えないことぐらいあるんだよ。」
こんな風に、少しきつく当たってしまった。
「言えねぇ事なのかよ。」
「あぁ、言えないね。どうだっていいことだろう?」
「ンな事はねぇよ。恋人が夜どっか行ってるんだから気になる。」
「僕だって、中也さんが桜とどこか行ってるの気になる。」
僕等は互いをにらみ合った。
「あー、もういいよ。お前なんか知らねぇ。」
「あぁ、そうですか。僕も貴方の事なんてもう知らないです。」
あぁ、悪い癖。
素直になれたらどれだけ良かったのだろう。
なんて、どれだけ思ったか。
少し、泣きそうになりながら自分の部屋に戻った。
歌の練習、しないとな…。