もしもSAO内で幼馴染と再会したら(仮)

□4結婚
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好きな気持ち

『あの子も、きっと待ってる』
昨日、リズから言われた言葉はキリトを大いに慌てさせた。アスナをそんな風に見たことがないかと聞かれれば嘘になるが、自分はアスナに相応しくない。現実の彼女の世界を知っているからこそ、そう思っていた。
しかし、一晩リズと一緒に居てキリトの中で何かが変わった。
“自分なんかが”と思わないで。もっと自分を誇って良いのだと。
アスナはこんな自分でも傍に居ることを許してくれた。そこに縋って良いのかずっと迷っていた。圏内事件で仲直りは出来たが、それはこのゲームが始まったころに戻っただけ。そこからもう一歩近づいても良いのだと言われたのだ。
たとえ仮想の世界だとしても自分の中では現実だ。それは彼女もだと信じたい。ここで得た物は現実で得ることと同じだと。
彼女が愛おしい。自覚した瞬間、今まで抑えてきたものが溢れて来る。決してそのままぶつけて良いわけじゃないけど、そうなった時、キリト自身、抑えが利かなくなりそうだった。少しずつ、少しずつ表に出していこう。そう思って、昨日、メッセージを送った。
文面なんて覚えていない。ただ、転移門を潜るとき泣きそうな顔だったその意味が知りたかった。何か気に障ることでもしたのか、ギルドで何かあったのか。アスナと別れた後、ねぐらに戻ってもアスナの事ばかり気になっていた。
返事がない事も拍車をかけ、居ても立っても居られず以前教えてもらったアスナの住まいを訪ねた。理由を訊いても「何でもない」を繰り返すばかり。信用無いんだなと落ち込む一方、どこか疲れた様子も受けたため、また眠れてないのかと心配した。
無理やり眠らせたがアスナは自分と違いギルドに所属している。既に寝る準備万全のアスナに今更確認したが、今日はギルドに顔を出さなくても良いと言われ安堵する。そして「起きるまで傍に居て」と言われた。
眠っている間に帰るつもりだった。だがそう言われてしまうと帰るわけにはいかない。前は同じ部屋に泊まったが、今は互いに住まいを持っている。
こういう時、面倒だなと苦笑した。
深く眠っているのかキリトがアスナの髪を梳いても起きる気配はない。一房梳くい、さらさらと流れるままに任せる。
相変わらず、綺麗な髪だな。
仮想なのだから痛んだりすることはないのだが、彼は昔から彼女の髪が好きだった。梳くとさらさら手から流れていく栗色の髪。子どもの頃は髪が柔らかすぎて髪型が上手くいかないの、と泣いていた日もあった。けれど、彼はそんな日でも彼女の頭を撫でて髪の毛の柔らかさを楽しんでいた。
「…………」
低層階の頃抱いていた気持ちは“傍に居てはいけない”という思いだったが、今は違う。“傍に居たい”と素直に思えるようになった。今すぐに想いをぶつけることはしないけれど、今だけは、安らかな眠りを守りたくて、彼女の額にこつんと己のと合わせた。
「おやすみ、アスナ。良い夢を…」
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