もしもSAO内で幼馴染と再会したら(仮)

□1再会
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1再会

私、きりとくん大好き! 大きくなったらきりとくんのお嫁さんになるの!
僕もあすなちゃん好き! だからずっと一緒だよ!

約束! 約束…


受験生になり、学校と塾、そして家との往復になって久しい秋。もうすぐ統一模試だ。ここでより順位を上げなくてはと考えている明日奈の耳に自分を呼ぶ声が聞こえた。
「もしかして明日奈ちゃん?」
「え…?」
「やっぱり明日奈ちゃんだ。久しぶり! 元気だった?」
小学校で仲の良かった一人だった友人で、転校してからしばらくは連絡を取り合っていた。けれど、中学になると勉強に追われ、次第に疎遠になっていった。
「久しぶりだね」
懐かしさが募り、暫し受験の事は忘れる。門限が差し迫っているため長話は出来ないが、何のしがらみもなかった時に戻ったようで明日奈の心は躍った。
転校するまでは幸せだった。自分の求めた友人達に囲まれ、休みの日には一緒に出かけて、でも今は違う。母に徹底的に管理されている今は。
「そういえば明日奈ちゃん、和人君て覚えてる? 一個下の」
「え、えぇ…」
忘れる筈がない。明日奈にとって今も大切な思い出を色鮮やかにしている少年。明日奈の初恋の相手。母に決められた相手を良しとしない最たる理由だった。
「彼がどうしたの?」
「弟が同じクラスなんだけど、あの子、学校でも一人なんだって」
「え…?」
記憶の中での彼は友人は多い方で皆に囲まれ笑ってるイメージだった。彼の身に何があったのか。
「なんか四年生の頃から一人なんだって。ある日突然。明日奈ちゃんが転校してからだから、明日奈ちゃんの事引きずってるのかなって最初は思ってたらしいんだけど、今日までずっとだって言うから…」
「そう、なんだ…」
「しかもあの子、ゲームにはまって今じゃ立派なゲーマーだって言うし」
「ゲーマーって?」
「なんか、今度出る新しいゲームのテスターになったぽくて、それにのめり込んでるとか。あ、あれよ」
「ソードアート・オンライン…?」
「ゲームに関しては少し話してくれるらしいの。でも他はなるべく距離取りたがってるみたいだって…」
「そっか…」
「ごめんね、余計な事…。明日奈ちゃんも忙しいのに、ちょっとでもあの子とまだ関わりあるのかなって思っちゃって…。ほら、学校じゃ二人、もう恋人通り越して夫婦扱いだったじゃない?」
「え!? そうだったの?」
「うん。やんちゃな和人君をしっかり者の明日奈ちゃんが手綱引いて。でもいざって時は和人君、明日奈ちゃん守ってたし」
「あ…」
低学年の頃、高学年にいじめられてた友達を守る為に割って入ったことがあった。でも相手は体が大きく、力で敵わない。そんな時に助けてくれた。一緒に高学年の相手を追い払ったのだ。
あの時、彼の背中を守りたいと思った。守られるお姫様は自分には合わないのだと。
それから互いの今の学校の事を話し、家に帰った。
ソードアート・オンライン。どこかで見たパッケージ。そういえば兄が実は、とこっそり買っていた事を思い出した。夕食後、明日からまた出張になったという兄に、「なら私に貸して?」と相談してみた。
「珍しいな。興味があるのかい?」
「…うん。和人君が、テスターだったって聞いて」
「へえ。彼もゲーマーか」
「彼が見てた世界を私も見たくて…」
「…そっか」
まだ忘れられないのだと、妹の心情を察し、快く貸した。しかし、これがそれぞれの運命を大きく変えるとは誰も思わなかった。
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