短編集

□穏やかな休日
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今日は日曜日。

にも関わらず、軍員たちには当然それぞれに仕事が任されており忙しそうにしている者や、遠征等でこの場にはいない者がいる。

そんな中、1人の男が人通りの少ない道を退屈そうに歩いていた。



「はぁ……せっかくの日曜休みだっていうのに、他の隊員はみんな何かしら仕事が入ってるんだもんな〜。大人しく部屋に戻って体を休めておくか……」



男はそう呟くと踵を返し、自分の部屋まで帰ろうとした。

その時。



「あれ、グルドさんじゃないですか」



背後から声が聞こえ、振り返る男の名はグルド。



「おはようございます。朝食の時間に特戦隊の方たちにお聞きしたのですが、今日はグルドさんお休みらしいですね」


「おぉ、おはようルーシー。そう、今日は数ヶ月ぶりの日曜休みなんだ。でも、正直することもなくて退屈なんだよな……」


「日曜日とはいえ、皆さんはお仕事ですもんね」



何気ない会話を交わす2人。

和やかな時が過ぎる。

そこでグルドはふと違和感を覚えた。



「あれ?そういえばお前、利用客の少ない時間帯でもいつも飲食スペースにいるよな。なんでこんなとこにいるんだ?買い出しか何かか?」


「違いますよ。実は私も今日はお休みをいただきまして、それでなんとなく歩いていて。そしたらグルドさんを見かけたんです」



自分と同じ理由で同じ場所を歩いていたと言うルーシーに少し親近感が生まれた。



「お前、これからなんか予定はあるのか?」


「いいえ、特には。普段皆さんの食事を作らせてもらっている時が一番楽しいので、休みの日は何をすれば良いのか分からないんですよねぇ……」


「ハハハッ。お前も暇人なのか」


「まぁ、そうなりますね。なので、もしグルドさんが良ければですが、今日は私と一緒に過ごしていただけませんか?」


「…………は?」



思ってもみなかった突然のルーシーからの誘いに驚き、ぽかんと口を開けて立ち尽くすグルド。

ルーシーと休みが同じ日になったことは今までもあったし、そんな時は共に一日を過ごしたことだってあった。

ただ、それは特戦隊の皆も一緒だったからだ。

他の隊員たちはルーシーと仲良さげに話をしていたり、個々で遊びに行ったりしていた。

それにひきかえ、自分とは会えば世間話をする程度の仲、ただそれだけだった。

別にそれを気にしていたわけではなかったし、今も先程の他愛ない会話で終わるのだと思ったのだ。



「あ、あの、無理なようでしたら大丈夫ですよ。せっかくのお休み、お部屋でゆっくり過ごしたいですよね……!」



なかなか返事をしないグルドに自分の誘いは迷惑だったかと思い、そう告げるルーシー。

その声にグルドはハッと我に帰ると、首を左右に振って否定した。



「い、いや、1人で部屋にいてじっとしてても体がなまるばっかりだからな。ちょっとくらいならお前と休日を過ごしてやってもいい……けど……」


「本当ですか……!?後から“やっぱり1人の方が良かった”とか言わないでくださいね?」


「……あぁ、男に二言はないぜ」



思わずそう口走ってしまったからには後には引けない。

ルーシーといること自体が嫌なわけでは勿論無い。

ただ、ルーシーは自分といて楽しいと感じるのか。

むしろ、ルーシーが“やっぱり1人の方が良かった”と感じるのではないか。

そう考えてしまうのだ。
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