BROTHERS CONFLICT 長編:男主
□始まり
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〜♪
静かな刹那の部屋に、聴き慣れたメロディが響く。携帯の着信音だ。
「もしもし、父さん?」
刹那は携帯を耳にあてながら穏やかな声で話しだす。電話の相手は刹那の父親である麟太郎だった。
「久しぶりだな、刹那。元気にしていたか?」
「そうだね、久しぶり。こっちは大丈夫、絵馬も元気だよ。それより父さんから電話なんて珍しいね。何かあったの?」
久しぶりに聞いた父親の声に何処か安堵するのを自覚しながら尋ねた。
「…刹那、良く聞いてくれ。実は父さん……再婚するんだ」
「再…婚…?再婚…、そっか、父さん再婚するんだね、おめでとう」
急な話に一瞬理解が遅れた。しかしすぐに冷静さを取り戻し、祝いの言葉を口にする。
父さん…いや、麟太郎さんだっていつまでも俺達の世話ばかりしてもいられないだろう。
父さんと俺、それから妹の絵馬。俺達は3人家族だけど、3人共血は繋がっていない。幼い頃に両親を亡くした俺を、そして絵馬を、麟太郎さんは快く引き取り、ここまで男手一つで育ててくれた。
絵馬はその事を知らない。麟太郎さんとも俺とも、血の繋がりがあると思っている。もう少しだけ、内緒だ。
「お相手は、どんな人?」
刹那は平静を装って尋ねた。
麟太郎さんが選んだのなら、きっと素敵な人だろう。
「ああ、相手は美和さんといって……」
それから麟太郎さんはその再婚相手の美和さんについて語りだした。とても幸せそうに。
仕事の打ち合わせの時に出会ったこと、会社の社長でアパートを経営していること、沢山の息子さんがいること。他にも様々な事を話してくれた。
「素敵な人なんだね、美和さん」
「ああ、とても。そうだ、来週の末に顔合わせを兼ねて食事をしたいんだが…都合は付きそうか?」
「うん、大丈夫。絵馬には、まだ言ってないよね?ちゃんと父さんの口から報告してあげてね」
「分かった。後でちゃんと連絡する。絵馬の事、本当にありがとう。刹那がいてくれたおかげで絵馬は無事にあそこまで育ってくれた」
ああ、本当に
「お礼を言われることじゃないよ。だって僕らは、家族でしょ」
血の繋がりなんかなくても
「ああ、そうだな。家族だ」
俺達は
「そうだよ。ーーー父さん、美和さんと、どうかお幸せにーー」
家族だ。