読み物

□プロローグ
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__ピッ、ピピッピピッピ《ガチャンッ》

『………ふぁっ、ぁ…』

現在の時刻、午前4時。
一般的にはかなり早めの起床だけど私の一日はこの時間からはじまる。

顔を洗って、朝食を済ませて、身支度を整えて、店の準備をはじめる。

父と母が残した店を継いでからもうすぐ2年。
元々店の手伝いをしてたから掃除は完璧。料理も教わっていたから一人での経営にもすぐに慣れた。…まぁ、結構大変なんだけど。

『……ふぅ』

準備万端な店内のカウンター席に座って少し休憩。開店時間は7時半だからあと30分はある。少し前まではギリギリだったけど余裕ができた証拠だ。

店内はシンと静まっていて少し寒い。そろそろ暖房をつけたほうがいいかもしれないな…

店内をもう一度見回して目を閉じる。そうするといろんなことが鮮明に思い出されて、なんていうか…胸の辺りがざわざわした。

テーブル席が5席にカウンター席が7席。広めにとってある間取り、ゆったりとした穏やかなこの店の雰囲気が好きで、父が入れたミルクたっぷりのカフェオレと、母が作った苺のショートケーキが大好きだった。

父と母が亡くなって、二人がいないこの生活にもだいぶ慣れた。
慣れたけど、ぽっかり空いた穴がいつまで経っても埋まらなくて、23にもなって親離れできてない自分が情けない。

何でもいい、何でもいいから私を変えてくれる出会いが欲しい。
なんて、メルヘンチックなことを考えた自分に苦笑した。気持ち悪いな、柄でもない。

少しして開店時間になったので外の札を”close”から”open”に変えた。
そろそろブラックボードの内容変えようかなぁ、なんて思いながら店に入る。

お昼には割と人が入るこのお店もガランとしていて私だけしかいない。当たり前だよね、今開店したんだから。誰もいるはずがない。
私だけのはずなんだよね。絶対。

……なのに、なんでかな?

「こ、こっちにくるな!」

『………いや、君だれ?』

着物姿の男の子がいる。

(まぁ、都合良く考えて私の願いが叶ったとしよう。)

(でもさ、神様よ…)

(私これから仕事なんだけど)

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