咥えタバコとハンケチ
□00:その名は
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「もう何年になると思う?太宰」
太宰と自分としかいない武装探偵事務所、変にその言葉が響いた。
他の皆は、話題の人喰い虎探しに追われていることだろう。
「なんだい、国木田くん珍しい、
主語が抜けてるの、しゅ・ご☆
言いたいことはなんとなくわかるけどさー」
「……丁度、二年と半年だ」
「もうそんな経つのかー、何処いったんだろうね?」
気にしてない風、を装う大宰に苛つきながらも会話を続けることにした。
「彼奴が、彼奴の異能が、敵の手に渡ったら…潰される。太宰、お前が1番居場所をわかっているんじゃないのか?」
最強の異能が敵の手に回ったら?…想像もしたくもない。
荒野 風景、が持つ異能は……
「……さてね。私にはわからないなぁ
なんたって追い掛けると逃げるんだもの、荒野」
珍しく萎んだ顔をしているのだから、本当のことだろう。
ネチネチした大宰から嗅ぎ回られるなんて憐れに思うが、こればかりは捕まって欲しい。
「フン、まぁお前から逃げるのなんて彼奴にとっては今も昔も造作もないってことだな……」
「そうだね……掴めないもんなぁ」
「掴み所がないのは解るが。大宰、お前もよりはマシだと思うぞ」
大宰のように人に迷惑を掛ることはしないし、掛けたとしても大したことではなかった、と思う。
「そうかなぁ、私なんかより色んなことやらかしてた気がするんだけど……、国木田くんがただ単に彼に甘いだけじゃない?」
「……そんなことはッ
少し片付けに手を貸してやったりもしたこともあったが……甘い?真逆そんな」
何故かこちらを見てクスクス笑い始めた大宰を訝しく思いながらも思考を巡らせる。
「あれ、気づいてないの?国木田くん、後ろ後ろ♪お疲れ様です、社長〜」
動揺していたせいか、いやもともと師匠である人物の気配なんて読み取れるはずもなく……
「社長ッッッ!?いつ後ろに!?」