拍手お礼SS集

□白妙の季節に君を想うということ
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→ver.ドンキホーテ・ドフラミンゴ



 その女海兵は戸惑っていた。目の前に、密かに憧れている”王下七武海”が一、ドンキホーテ・ドフラミンゴがいたからだ。



(何なに?! よく分かんないけどラッキー! ドフラミンゴ様をこんな間近で拝めるなんて!!)



 まだ若く、最近つるの部隊に配属されたばかりの彼女は、つるが嘗て”王下七武海”加入前の彼を追っていた事を知らない。新たに賞金首となった海賊の資料をつるの部屋に届けに来たところ偶然、そこに憧れのピンクモフモフコートが先客としていたのだった。



「あぁ、悪いけど、ちょっとそこで待っててくれるかい? この男は自分の話が終わるまで梃子でも動かないつもりみたいでね」
「フッフ……! つれねェなァ、おつるさん。俺はおつるさんと二人の時間を邪魔されたくねェんだよ」
「は、はいっ! かしこまりました!(えぇぇぇ何この状況?! つる中将とドフラミンゴ様ってそういう関係なわけ?!)」



 ”王下七武海”とはいえ海賊である彼と海兵である自分の、いわゆる「禁断の恋」というシチュエーションを想像してドキドキしていた彼女としては、つるとドフラミンゴの年齢差は、それを更に超える「禁断感」を感じて、むしろ憧れの域に到達しようとしていた。



「それで、聞きたい事って何なんだい」
「フフッ! 世間話をする時間もくれねェか……まァいい。おつるさんは、ホワイトデーには何が欲しい?」
(やっぱり?! やっぱりそうなの?! うわぁぁぁ何それ中将超羨ましい!!)



 椅子に反対向きに座り、背凭れに肘をついてそこに顎を乗せる、というドフラミンゴの少年っぽい一面を見て、女海兵は感激する。それと同時に、ホワイトデーのお返しを選ばせてもらえる程の親密さであるつるに、彼女は羨望の眼差しを送った。そんな彼女とは裏腹に、つるは深く溜息を吐く。



「私ゃ一度たりとてアンタにバレンタインデーの贈り物をした覚えはないんだけどねぇ、ドフラミンゴ」
「フッフ! おつるさんなら24時間365日、いつでも受け付けてるぜ? 一般論でいいんだ、女ってのは、何を貰ったら嬉しいモンなんだ?」
(えぇ?! 何これドフラミンゴ様中将に片想いなの?! それはそれで、イイ……!!)



 ドフラミンゴの冗談に頭を抱えるつると、海賊から海軍将校への片想いという新たなときめき燃料を投下されて頭を抱える女海兵。二人の表情は面白い程に正反対であった。



「まぁ……義理で贈った相手からなら、お菓子程度でいいだろうね。本命なら、返事が貰えるだけでも充分だと思うが……物も贈るんなら、アクセサリーなんかが嬉しいんじゃないかい?」
「フフッ! そうか……返事と、アクセサリーだな? ありがとよ、おつるさん。参考にさせてもらうぜ」
「勝手におし」



 そう言って、ドフラミンゴは席を立つ。本命で貰ったという前提だったらしいその様子につるは驚くが、口には出さずに部屋を出て行くその後ろ姿を見送った。



(なんだっていいけど、本命なら本命で女の方がちゃんとアイツを射止めといてもらいたいもんだね……少しは大人しくなるだろう)



 そういえばドレスローザに王妃はまだいないんだったね、と、つるはその玉座の隣に座ることになるかもしれない女の姿を想像する。だがどうにも、あの男に並び立つのが王妃たる器を持つような女であることが想像出来ず、つるは例えそうなったとしても、あの男が大人しくなることはないだろうね、と溜息を吐いた。

 ふと見れば、部屋の隅で壁に向かい、俯いて何かをブツブツと呟く女海兵の姿がある。そういえば待たせていたんだったな、と、つるはその後ろ姿に声を掛けた。



「待たせて悪かったね……なんでアンタ、そんなに死にそうになってんだい」
「いえ……何でもありません……!」



 ときめきに射殺されそうになってました、とは流石に言えず、女海兵はよろよろとつるに資料を手渡す。つるがそれを受け取り礼を言えば、女海兵は敬礼をして力無く部屋を出て行った。



(ドフラミンゴもあの娘も、変な子達だね……)



 つるは肩を竦めると、資料を斜め読みしながら、ドフラミンゴが来る前に淹れてすっかり温くなってしまった緑茶を飲み干した。



*****

■女海兵「ドフラミンゴ様の魅力ですか? 勿論『3K』ですよ! 高身長、高地位、高賞金額!」

2016.03
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