拍手お礼SS集

□白妙の季節に君を想うということ
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→ver.ニコ・ロビン



「え、お礼ですか? いいですよ、そんなに気を遣っていただかなくても!」



 予想通りの答えが返ってきて、ニコ・ロビンは思わず笑ってしまう。いいですいいです、と言いながらぶんぶんと手を振ってみせる目の前の相手は、口説き落とすにはなかなか手強そうだった。



 思いがけず、誕生日とバレンタインを兼ねた贈り物を貰ってから、一カ月。八歳でオハラを飛び出して以来、ほとんど無縁だったその二つのイベントをしてくれた大事な人に、ロビンはどうしてもそのお礼をしたいと考えていたのだが。



(正直、縁がなさ過ぎて……お礼をしようにも、どうしたらいいか、分からないのよね)



 博識で、他人の心の機微もすぐに察知することが出来る彼女であっても、自分のこととなると途端にその感度は鈍くなる。自分がそれをしてもらってとても嬉しかったから、同じように嬉しいと思ってもらえる事をしたい。そう考えた末に、ロビンは件の贈り物をしてくれた本人に、お礼は何がいいか聞いてみることにしたのだった。



「あれは私からの普段色々とお世話になっている感謝の気持ちなので、そこで完結しているんですよ。そこにロビンさんがお礼をしてくれるとなると、私がそれにまたお礼を返しちゃいますよ?」
「それは、きりがないわね」



 困ったものね、とロビンは小さく笑う。下手なことは言わずに、自分で考えた方が良かっただろうか、とも思ったが。



「それでも、やっぱり気持ちには気持ちで返したいわ」



 ロビンがそう言うと、今度は相手が悩む番だった。この押し問答を解決すべく、彼女は腕を組んで考える。



「――分かりました、こうしましょう。気になってたカフェがあるんで、そこに一緒に行ってください」
「え? そんなことでいいの?」
「いいんです。そうしたら、次はロビンさんの行きたい所に私が連れて行きます。その次は、また逆。これでどうですか?」



 良い事思いついたでしょう? とでも言いたげな彼女の笑顔に、ロビンの胸の奥がぽうっと温かくなる。親しい誰かと一緒に出掛けるなんて、人生を歩んでいれば当たり前にあるような経験は、彼女にはない。それを、目の前の彼女は叶えてくれるという。



「ええ……いいわ。そうしましょう」



 お礼のはずなのに、また大きな喜びを貰ってしまうわ。そんなことを思いながら、ロビンは胸の温かさを噛み締めるように、目を閉じてそっと微笑んだ。



*****

■お母さん。ロビンは今日、お茶友達が出来ました。

2016.03
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