翠の風は悪戯に

□無欲ならでは?
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 “無欲ならでは?”


聖家の冷蔵庫は小型のそれゆえ、
それほどたくさんの買い置きをストックしては置けぬ。
なので、
特売の日に山ほど買い込んで
小分けして冷凍してちびちび使うという節約には縁がなく。
肉や魚は買わぬとはいえ、
その代わりのたんぱく質、
大豆ミートや卵や牛乳、チーズなどなどは常備しているし、
それにこれからは常温で管理しにくくなるものも増えるので、
毎日の日課であるお買い物も、
やや計画的なそれとなるようで。

 “そうなんだよね。
  チョコレートとかそこいらへ出しとくと
  溶けて始末に負えなくなるし。”

ご町内の婦人会の皆様や、
商店街でそれぞれのお店の旬のものを勧めるのが十八番な
ベテラン主婦の方々からでさえ、
主夫の鑑と謳われておいでのブッダ様ではあれ、
頂きものというフェイントには太刀打ちが出来ぬ。
作りすぎたのでとか、お好きだったでしょう?と
善意にあふれるお裾分けをいただけば、
冗談抜きに助かるのでありがたく頂戴するし、
残り物も簡単に処分はせず、きっちりと最後まで食べ切るのが基本。
なので、
そういったものがちょろちょろと冷蔵庫の隙間を埋めていて、

 『…イエス、今日は公園まで出かけよっか。』

このちょっとずつというお惣菜、
お弁当に詰めたらちょうどいいんじゃなかろうか、なんて。
即妙なことを思いついては、
きちんと管理しておいでなところがお流石で。
ただ、

 「あ、ブッダだ、こんにちはvv」
 「あら、もうお帰りかい?」

ご贔屓のスーパーから出て来たところで、
そちらはこれからという静子さんと愛子ちゃんの母子と出くわして。
おや今日は遅かったんですね、うん ちょっと先に郵便局を回ったんでねと、
よくある会話を二言三言奥様同士で(?)交わしておれば、

 「あ・そーだ、イエスにありがとーって言わなきゃなのに。」

二人の会話を見上げていた愛子ちゃんがそんな一言を掛けてくる。

 「? イエスに?」

ブログへの書き込みがやけに多かったとかで、
それへのレスに追われておいでのヨシュア様は今日のところはお留守番。
一緒じゃないんだ御免ねと、眉を下げて代わりに謝るブッダだったのへ、

 「そうそう。
  懸賞で当たったっていうビスケットの詰め合わせ、
  愛子にってくれたんだってねぇ。」
 「ああ、あれね。」

それならブッダもようよう知ってる運び。
お菓子メーカーの懸賞に当たって、
新発売だというビスケットあれこれがドドンと届いたのを
知己の皆様へお裾分けしたのだ。
pcを開くのが日課のイエスは、
画面に必ず何件か出ている バナー広告の懸賞ものへ、たまに気ままに応募しており。
それが結構いい確率で当たってもいるようで。

 『私のこれは、ブッダのポイントカードの影響なんだよ?』

ふふーと楽しそうに笑う彼の言う通り、
ブッダも様々なポイントカードを携帯しており、
こつこつと貯めては商品券だの割引券だのへ交換してもらうマメさを発揮している身。
まま、そういうことを持ち出されずとも、
特に非難するつもりはなくて。

 “どうしてもどうしても欲しいなんてノリで
  強く念じているようなら注意もするけれど。”

そんなことをし、神の子の奇跡で福を呼び寄せるのは、
もしかするとフェアじゃないかも。
そこのところを案じないでもなかったブッダだったものの、

 「イエスったら応募したもの片っ端から忘れちゃうんですよね。」

何か届くたび、なんだこれというお顔で小首を傾げており。
封を解いて、同封されてる“おめでとうございます”という書面を見ても、
???という状態の時が結構あるほどで。

 「おや、それでも結構当たるんだったら、よほどくじ運がいいんだねぇ。」
 「ところが、本当に狙ってたらしいものほど当たらないんですって。」

当選発表を一応は確かめるものほど、外れという結果なことが多いようで。

 『どうしたの? そんなに残念がるほど欲しかったの?』
 『あ、いやあの、そんなことはないんだけれどもね。//////』

あわわと焦ってpcをぱたりと閉じちゃうところが何だか可愛い。

 『あれだよ、運の無駄遣いをしちゃってるんだよ。』

どうしてもほしいわけじゃないものは応募しなけりゃいいのにと助言したこともあったれど、

 『でもさ、こないだみたいに、
  無農薬野菜たか当たったりするとブッダが喜ぶじゃないか。』
 『…それは、まあねえ。////////』

余程イエスの心に響いた喜びようをしちゃったらしいなと、
反省半分、恥ずかし―//////と赤くなる辺り、
イエスに負けないくらい素直な如来様だったりしたそうで。(苦笑)

 “あれも時々困らんでもなくて。”

例えばチョコレートやハム、乳製品などが
思わぬタイミングでどさっと大量に届くと、
冷蔵庫の許容に収まらず。
冬場ならともかくこれからの時期は、
大慌てでご近所へ配って回る羽目になりもする。

 「それじゃあね。」
 「ああ。」「ブッダ、またねvv」

出口を塞ぐのも何なのでと、仲良し母子とニッコリ笑顔でお別れし、
ああそうだと思いだしたのが、懸賞用のハガキの購入。
イエスがpcやスマホでの応募派ならば、
ブッダは商品についてるポイントを集めるクローズド派。
パン祭りのように
お店のカウンターや店内のボックスへ投函するタイプのものは珍しく、
大概はキャンペーンあてにハガキを出すこととなる。
普段だと必ずもらえるものにしか関心は沸かない彼なれど、
イエスに触発されたわけじゃあないが
いつも買っている牛乳でクールデザートが当たるキャンペーンが始まったので、
ちょっと…試してみよっかなと思いが至り、
当たるといいなとほのかにうきうきしつつハガキを買いにコンビニへ。

 「…えっとぉ。」
  
さて、ここで問題です。
……といいますか、
ブッダがカウンターのお兄さんへハガキを下さいと言ったところ、

 「はい。かもめーるもありますが、どっちにしますか?」

そんなお返事が寄越されて、
さあ、どういう選択をした聡明な釈迦牟尼様だったか、
良ければ忌憚なくご意見を!



   〜Fine〜  16.06.17






 *何のことはない、
  もーりんが遭遇したひと悩みでございます。
  ハガキを買っといてと母に頼んだところ、
  かもめーる用のを買ってきてくれまして。
  お年玉付き年賀はがきみたいなもので、
  知己に暑中見舞いとか出す分にはいいけれど、
  これで懸賞に出すのは…ちょっと考えませんか?
  抽選は9月の初めだしなぁ。とほほん



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