キミといると温かいのがしあわせvv

□日本では 師走というけれど
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前倒しが好きな日本では ハロウィンが終わらぬうちから
あちこちでさりげなく(?)囁かれていたクリスマスを、
いよいよ公明正大に宣言できる月となって 早くも三日。
暗くなるのが早まる宵に、それでも外出している方々へのお楽しみ、
イルミネーションやライトアップも既にあちこちで始まっており。
繁華街では大きなツリーも飾られていて、
ショッピングモールの広場に据えられてある大きなからくり時計も、
すっかりとクリスマスバージョンのそれへと模様替え済み。
時報の鐘の音とともに現れる、赤いコート姿の動物の人形たちが、
ギャラリーとして周りへ集まった子供たちを沸かせておいで。
そんなこんなで“いよいよの冬本番”というお声も聞こえはするけれど、
寒暖差が激しかった波乱の秋に引き続いているせいか、
北国ではいざ知らず、都内ではまださほど、身がすくむほどという寒さが続いてはなくて。
いい陽気だと外で着るものにもちょっと迷うのが、贅沢ながらも難点だったりし。

 「まだダウンは早いかな、でも朝晩は冷えるから油断しちゃあいけないよ?」

ファッション(というか見栄え?)にはこだわっても機能性には無頓着なイエスへ、
ブッダがいろいろと案じてやるのも毎日のこと。
うんうんキミは風邪ひかないって判っているけど、
それってひいてもすぐ治るってことなんでしょう?
ぞくぞくって悪寒がするのとか、風邪ひくほど冷えるのとか、
気持ちが下向きになりそうな辛い想いをするところまでは同じでしょうに、と。
噛んで含めるように言い諭し、
帽子やストールや手袋、忘れてなぁい?というの、
出がけに確かめて差し上げる きめ細かいチェックを毎日実践中だったりする。

「ブッダこそ、
 寒くなったら“雪降らないかな”ってそわそわするの治ったの?」

その生涯の中で雪に縁がなかった身ではないはずだけれど、
それでも興奮しちゃうところは純真な子供のよう…なんて思ってたら大間違い。
極寒の中での苦行、ワンダフル♪なんてな、
とんでもない理由でワクワクしちゃう人だけに、

「キミこそしっかり用心しなきゃあいけないんだよ?」

そりゃあまあ、光の者としての聖なる力に頼ってばかりな私に比べれば、
様々な修行の賜物で 基礎体力とかずんと上なのかもしれないけれど。
それでも 熱出して病院に行ったことは忘れちゃいけないんだからね、と
あくまでも対等なんだという身構えで、滔々と言葉を並べるヨシュア様だが。
気遣いとかお説教というよりも、
キミの身に何かあったら
私 困っちゃうじゃないよという懇願や愛想に聞こえるのは、

 “果たして 気のせいだろうか。”

しょうがないなぁと、内心でくすすと微笑っておいでの釈迦牟尼様。
これ以上論を重ねて言いあっても得るものはないかと、
ムキにはならず、矛先を引っ込めてしまわれるところが大人の余裕。
それよりも、せっかく温かい日和の中をお出掛けして来ているのだからと、
もっとワクワクすることへ話題を変えようと
ジャケットのポケットに突っ込んできたスーパーのチラシを引っ張り出して、

「じゃあ、風邪予防のためにも、
 今日の夕飯は温かいものにしなくちゃね。」

依然としてお野菜が高いのが困りものだけど、
天部から原稿料の一部、現物支給としてハクサイと蕪をたんといただいてるから、
ホワイトソースで煮込んでまずは一品でしょう?

「…そんな貰い方してるの?」

それは初耳だったのか、
怪訝そうな顔で隣のハイパー主夫さんを見やったイエスだったが、

「この野菜の高騰ぶりでは、いっそ現金よりも助かってるよ。」

しかも天世界レートでもらえるから、
地上の市場で買うのの何倍の量を貰えることか。
天部かかわりの話題だというに、ここまでほくほく笑うからには、
相当に助けられている模様。

 “ううう、ごめんね〜、私がそういう方面へは甲斐性なしなばっかりに。”

あとで何かしら、微妙な穴埋めとか持ち出されたら、
原稿でも企画開発への協賛でも、私も勿論協力するからねと。
後半の方は本気でブッダが嫌がりそうなことまでも、
こそりとその胸で誓っておいでのヨシュアなのにも気づかぬまま、

「今日って何かの記念日だったりするのかな。」

だったらそれまつわりの売り出し商品があるかもしれぬと、
スマホを取り出したブッダだが、

「えっと、手品の日とカレンダーの日、それとプレママの日…?」

123で手品の日、いい妊婦さんでプレママの日だそうで。
いい妊婦って何だろう?と、こちらはもーりんがググったら、
ベビーザらスの1号店がこの日に開店したからというのが由縁だそうです。(何だかなぁ…)
カレンダーの日というのは、
日本で正式に太陽暦が始まったのが大正5年の12月3日だったので。
それからそれから…

「あ…。」

もうお気づきですねの、ワイフ・サンクスで妻の日(愛妻の日は1月31日)

「あ、そっか。今日はそういう日だったか。」

お隣からブッダのスマホを覗き込み、
うっかりしてたなぁと、ほんわか笑ったイエスが続けて口にしたのが、

「帰りにお花屋さんへ寄ってこうね♪」

至極当然な口調で言ってのけるところが、

 “敵わないなぁ、こういうところ。////////”

もしもブッダが何でどうしてと訊いたらば、
だって当たり前のことじゃない、大好きな奥さんへの感謝の日でしょ、
あ、奥さんて決めつけたら失礼かな、ブッダの方が頼もしいのにね…なんて。
きっと衒いなく言ってのけてしまう彼なのに違いない。
頼りにならないなんてとんでもないない。
自分に素直で、真っ直ぐで。
そして、そんなキミだから、

 “あのその、だだだd、大好きなわけなんだし。////////”

口許をうにむにと噛みしめて、ちょっぴり頬を赤くしちゃった如来様。
道なりに連なってたブロック塀のうえ、
丁度頭上に張り出してた桜の枝に、早すぎる蕾が膨らみそうになってたほどには、
こちら様も正直に“好きって想い”を認め、受け入れていらしたようで。
まだまだほわんと温かい、そんな冬の入り口の立川だったようでございます。



 ◇ おまけ ◇

ご町内でもとうに顔馴染みの外人さんとなっておいでのお二人なればこそ、
平日の昼間に在宅しておいでの男手として頼りにされることも多々あって。

「あ・そうそう、お二人が居たんだわ♪」

商店街ではクリスマスと年末に分けて、福引大会が催されるのだが、
その会場となる商工会の事務所前、入り口辺りに、
ディスプレイを兼ねて結構大きなツリーを飾るのも恒例で。

「福引を始めるのは17日辺りからなんだけど、引換券を配り出すのは来週の半ばから。
 そういうのの告知も兼ねて、早めに飾っておこうかってことになって。」

クリスマス気分を盛り上げる意味合いもある飾り付け、
しかもそれを納めている倉庫に、福引の景品もおいおい収めることとなるので、
早めに表へ出す運びに否やはなくて。

「良かったら飾りつけを手伝ってくれないかなぁ。」

学校が早めに終わるウチの子とかも手伝わせるし、
何だったらお昼も出すよと。
会議所横でお惣菜店を賄ってらっしゃる店主の奥さんに頼まれてしまい。
私たちでお力になるのでしたら…と引き受けはしたけれど。

「ねえ、イエス。」

あまりに大きめ、しかもオーナメントもたっぷり取り出され、
うあ、これって本格的な奴だと、ちょっとたじろいだ開祖様がたお二人。

「クリスマスツリーって流儀とかあるの?」

適当ではいけない気がしてきたと、式次第とか作法とか大事にしたがるブッダが呟き、

「ペトロに聞いてみようか?」

だって自分のお誕生日だったなんて最近まで知らなんだし、
ましてや日本のはサンタが主役みたいだし。
ああでも、ペトロも日本のは知らないって言いそうだな。
あの子の“知らない”は心臓に悪いなぁ…なんて、
本来の主役だろうイエスが、こちらも途方に暮れたようなお顔になった。。

「師匠が走るほど忙しい月っていうのはホントだね。」
「うん。上手いこと言ったもんだ。」

いろいろグローバルになりすぎて、師でも走って調べ回らにゃならぬとはと。
妙なことへ感慨深くなってしまった、イエスとブッダでもあったらしい。



   〜Fine〜  16.12.04







 *急に立て込んでしまい、
  昨日書き上げる予定だったのに、
  なんかバタバタ、ずれこんじゃった代物です。
  タイトルのつじつま合わせが“おまけ”ってどうよ。(う〜ん)
  年賀状とか大掃除とか、やることいっぱいの師走の到来だなぁ。


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