夜明けの時間。

□04,叫び声
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アイシャの額、そして掌にじんわりと冷や汗が浮かぶ。
考えるより先に、“嫌な予感”がアイシャを2階へと上がらせる。


お願い、ただの勘違いであって―


そう思った途端、どの扉だろう、と悩む間もなくある扉から男の叫ぶ声が聞こえた。


「うわぁっ…何だ貴様ら!」


少し震えているが、強がっている声がするのは一番奥の扉だ。
静かに、でもしっかりとその足で扉の前まで行き、ドアノブに手をかけた瞬間だった。



「「やめっ…うわぁぁああぁ!」」



「!!!!」


先程の男性であろう悲痛な叫びが聞こえ、体がピクン、と跳ねた。


何があったんだろう。
先ほどの音といい、今の叫び声といい、“何か”が起こっていることは確かだ。

…怖い。

やっぱりお母さんの言う通り、ここは危ない場所なんだ。
“やっぱり帰った方が”と思ったところであの悪夢を思い出してはっとする。

でもこの先にお母さんがいるかもしれない。
夢で助けて、と私を呼んでいたのかもしれない。

そうだ、まだお母さんの声が聞こえたわけじゃない。
違ったら違うで良いじゃないか。
とにかく、ここを開けなければ…



何故だか、そんな気がする。



ゴクッと生唾を飲み込んで、ドアノブに力を入れると『カチャ』と音がしただけで扉は開かない。
どうやら鍵がかかっているようだった。
どうしよう、とりあえず中の様子が見えるだろうかと鍵穴を覗いた瞬間、勢いよく扉が開いた。


「きゃっ…!!」


扉が開いた勢いでそのまま部屋の中へと倒れこみ、その拍子に被っていたフードから顔が露になる。


「いったぁ…」


「なんだ、ガキじゃねぇか」
「チッ…驚かせやがる」
 

体を大きく床に打ち付けたものの、上から浴びせられる声に顔を上げる。
そこには二人の男がアイシャ見下ろしていた。

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