問題の頃

□幸せの比例式
1ページ/3ページ


その日は日も暮れ、太陽がはるか地平線に沈む。
そんな時間だった。

「要さん、遅いなぁ」

あるマンションの一室で、愛する人の帰りを待つのは
恵である。
彼女はまだ19という若さにして婚約し、多忙な主人を
支えようと、日々精進していた。

「連絡もないし……またテストでも作ってるのかね」
ワォン!

潔く返事をしたのは恵と同じく主人の帰り
を待つ、柴犬の海老蔵である。
彼は佐藤家に飼われて以来、主人と恵
に忠誠を誓う賢い犬である。

ワォン!
「なぁにエビ。遊んで欲しいの?」
ワフゥ……

しかしながら、彼は顔立ちが丸く愛嬌があるため
どこまで伝わるかは神のみぞ知るところである。
次へ

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ