異世界物語

□其ノ壱
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皆は1度考えたであろう、この世界に魔法があれば、非日常があればと。今俺のいるこの世界にはそれがある。しかも、化学兵器にも富んでいる。
まあ、見たらわかるって

ここは、龍の首都ガイア。僕らの暮らすここはなにかと物騒である。毎日街の中心にある斜塔で決闘、そして繁華街では銃と魔法の抗争。正直ここもあと少しで終わるだろう。僕の名前はタダツグ、そう、ただのタダツグである。
「きゃあっ!!」
どこかで悲鳴が聞こえる。まあいい、僕には関係ないことだ、そう言い聞かせることで僕は他人の死から目を遠ざけていた。だが、それも今回は例外だ。黒髪の美少女が瓦礫の下敷きになりそうだったのだ。そうか、あの悲鳴は…
「…クソが」
美少女には目がない僕の体質が彼女を救った。しかし、右半身に感覚がなかった。そうだ、あの少女を助けられていただろうか。しっかりと瓦礫を避けられていた。ふいにぼそりと呟いた。
「よかった」
これが僕の死ならそれなりに良いんじゃないかな、いや贅沢か。____
ここに来て2年経ったんだよな、2年前幼女をトラック事故から四肢を引き裂きながらでも守って、それでここに来たんだよななぜかはわからないが。まともなことが考えられない。目を閉じて天国へと召されよう。
「お父さん早く!」
「わかってる!だが」
「娘の言う事も満足に聞いてくれないの?この人は、この人は私を」
「マリアン、危ない!」
「きゃっ…おとう…さん?」
「ははは、右足がどこかに行っちゃったよ。まあ、治せるけどね」
「もう!」
「ザ・パール」
「何度見てもその光景は見慣れないわ」
「それで、少年は?」
「まだ息はあるわ、でも右半身と心臓が」
「なんとかなるさ、ザ・パール。あとはこの子次第だ。」
「ありがとう」

見慣れない天井だ。俺は村人の家に下宿させてもらえたのか?いやいや、俺にそんなストーリーはない。
「あら、気が付いたの?お父さん!」
誰?あ、思い出した!てかなんで生きてんの。
「あの、えと、その」
「どうかしたの?」
「誰?」
「名乗るのが遅れちゃったね、わたしはマリアン、少しだけ強い闇魔法が使えるわ!」
「奇遇だね、僕は白魔法が使えるんだ」
「全く奇遇じゃないじゃない、ふふ」
うおっ!なんだこの営業スマイルに似たゴールデンな光はッ!!こんな子が闇魔法なんてな。
「生きていたようで良かったよ」
「えっと、その、彼氏さんとか?」
「はは、俺はその子の父親だよ」
マジで?!親父っつったらこうなんつーかゴリゴリで怖い感じ…
「随分、若いっすね」
「まあ、魔霊だからね」
「ほえぇ」
魔霊とは、魔女、魔人と精霊のハーフである。魔女はこの世界で最も強く災厄だと言われるが、魔霊は忌まわれていない。理由は不確かだがそうなのだ。
「なんか力になれることとかってないっすか?」
「なぜだい?」
「だって俺、助けられた身なので」
「助けられたのはこっちよ、あなたが瓦礫の下敷きになる寸前助けてくれたのよ?」
そうか、繋がった。
「そういうことなら、そろそろおいとまさせていただくっす!」
「ゆっくりしててもいいんだぞ?」
「いいんっす、やるべき事があるんで」
そう、僕は今日も今日とて狩りに出て金を稼がねばならぬのだ。
「それなら、私も行くわ!」
「なんで?この先長くなるし君が行く義理もないよ?」
「そう言わないでお願い、ね?」
うん、命をかけてでもこの子を守ってみせる。そう誓った。
「危険な目に遭ってもいい?」
「あなたがいるなら大丈夫よ」
「俺っていつからこんな主人公ポジになったんだよ…ぐすん」
あ、心做しか涙が…。彼女が心配した目で見ている
「嫌、だった?迷惑、だったかな」
「命をかけてでも君を守ってみせるよ」
「へ?」
演出的に彼女の両手を僕の両手で強く握った。
「危険な目に遭ってもどんなことをしてでも守ってみせる!名乗り遅れたが、僕はタダツグ」
名乗ったところで慌てて両手を離すと、微かに笑って少女は手を差し伸べてこう言った。
「嬉しいわタダツグ、これからよろしくね」
その右手を手に取り契約完了。
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