沖田総司

□未来のお嫁さん
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「千鶴ちゃん、いる?」



「はい!」



朝早く、千鶴ちゃんの部屋に向かう。


もうすでに起きていたのか、襖はすぐにあく。



「おはようございます。どうしたんですか?」


彼女は笑顔で問うてくる。



「ちょっと、困ったことがあってね。手を貸してほしいんだ」



そしてやってきたのは炊事場。



「今日は、僕と一君が炊事当番なんだけど、昨日の晩一君に急な仕事ができてね、外に出てたみたいで、さっき帰ってきたからまだ寝かせてあげたいんだ。そして、僕一人ではまともな朝餉は作れないらしいから。文句言われるのも嫌だし君に頼んだってわけ」


「沖田さんもお疲れのようですけど…」


彼女の言葉に驚く。


実は僕も昨日の晩は一緒に仕事に行っていたから。


眠っていない。


「いや、僕はただの寝不足だよ。寒い朝は起きるのがつらい。それよりも、さっさと作っちゃおうよ」


「はい!」



元気よく返事をすると、千鶴ちゃんはテキパキと支度をしていく。



千鶴ちゃんと一緒になるといつも思うが、自分のするべきことがわからない。


と、言うよりも仕事がない。



それでも誰かがいる時はなにかしら相手から頼まれるんだけど…



「ねぇ、千鶴ちゃん。僕、なにしたらいい?」




「茹でてある青菜を切っておいてください」



今日の千鶴ちゃんはなんだか急いでいるみたいだ。


そんなことを考えながら包丁を握ると鋭く走る痛み。




「っ!」



僕の指からはよく見慣れた赤い液体。



「沖田さん!?」



慌てて駆け寄ってくる千鶴ちゃんに思わず吹き出す。



「ちょっと、僕を誰だと思ってるの?このぐらいの傷なら日常だよ」




「そんなことないです!すぐ戻ってくるので待っててください」



言って、大慌てで出て行った千鶴ちゃん。



その姿に再び笑みがこぼれた。



「痛みますか?一応これで大丈夫だとは思います」




「ありがと」



数分後、僕の手は包帯でぐるぐる巻きになっていた。



「大袈裟じゃない?」



「いえ、こうでもしないと、お休みになってくれないと思うので」




「え?」


唐突なことに間抜けな声が出る。



「沖田さんも、斎藤さんと昨晩出ていたんじゃないですか?」




「なんで?」


当たり前のような顔をして千鶴ちゃんが言う。



「そんな気がしました」



「敵わないな」



「では、私の勘に免じて、今日は休んでください。任せて頂いて大丈夫ですので」



彼女は自信満々に胸を叩いてみせた。



「じゃあ、お言葉に甘えて休ませてもらおうかな」




「はい、おやすみなさい」



「なに言ってるの?」



ニヤッと笑った僕に不審げな顔をする。



「休むとは言ったけど、寝るとは言ってないよ」



僕は炊事場の段差に腰掛け、千鶴ちゃんを見つめた。



「ここで千鶴ちゃんのこと見てる。どうせろくな手伝いはできないからいいよね?」



包帯を巻いた手をヒラヒラさせながら言うと、千鶴ちゃん悔しそうに眉を寄せる。



「本当は眠っていただきたいのですが、私の言うことなんて聞いてくださらないですよね」




「よくわかってるね。えらいえらい」



そのうち黙って支度を始める千鶴ちゃんの小さな背中に呟いた。



「お嫁さんがいるってこんな感じなのかな」



「え?何か言いましたか、沖田さん」



「ううん。なんでもないよ」





割烹着をきて、女の子の格好をしてる千鶴ちゃんを想像して一人でににやけてしまう頬を引き締めた。


きっと、想像するだけではないから。


いつか、現実になるから。




Fin




きっと本編ではありえないんだろうな、と。

一君がでてこないとか絶対ないですよね。

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