風間千景

□嫉妬
1ページ/1ページ



「千鶴、明日のことだが…」




「うわぁーーーん!ママぁーーー!」


俺が千鶴に声をかけたその時、隣の部屋から娘の泣き声。



「千景さん、ちょっと行ってきますね」



すこし申し訳なさそうに千鶴は隣の部屋へ向かう。



「ちっ」




最近はいつもそうだ。


子供ができてからというもの、いつも子供に邪魔をされる。



「すみません。起きちゃったみたいで…」



戻ってきた千鶴は俺に謝ると眉を寄せた。




「いや、構わない。それよりも明日は…」




「ただいまー!ママー!お腹すいたーーー!」




今度は息子の声。




「先に手を洗ってきなさい。それにもうすぐ夕飯だからおやつはありません!」




「ぶー!ケチー」




千鶴は息子を追いかけて炊事場まで行く。




「ちっ!」



ここには夫婦二人話す時間も無いのか。


そう思いながら炊事場の方を見やると再び隣の部屋から泣き声。




「仕方ない」



俺はこれ以上千鶴の時間が無くなるのは嫌だと立ち上がり娘の様子を見に行く。



「うぎゃあぁーー」



俺が抱き上げるとさらに泣き声を一掃強くする娘。



「千景さん!?大丈夫ですか!?」


息子とともにバタバタと走ってきた千鶴に娘を押し付ける。




「俺が抱くと泣くようだ」



「そんなことないですよ。ねぇ?」




千鶴は抱いた娘に笑いかけた。



「ちっ!」



腹が立つ。




「千景さん!?」



「少しでてくる。夕飯には間に合うように帰ってくる」




「…?」




それから俺は近くの森をぶらぶらと歩く。




最近はいつもいつも、子供たちに全て邪魔される。



子供たちにかかりきりの千鶴に腹が立つ。



そんなことを思いながら歩いているといつの間にか日が落ちていた。



「しまった。俺が時間を忘れるなんてな」



軽く息をつき、急いで家をめざす。



「ただいま」



「おかえりなさい」



「遅くなった」




「心配しました」



千鶴は安心したように息をつくと、微笑んで居間へと俺を促す。



そこには、二人分の善。



子供たちはどうやらねてしまっているようだ。



「すまないな」



「いえ、そんなこと」




2人で遅めの夕飯を食べて居間に座る。



「千景さん。ごめんなさい」




当然のその言葉に疑問符が浮かぶ。




「最近は、千景さんと2人の時間が取れなくて…って、これじゃ千景さんが寂しい、みたいな言い方になっちゃいますね。違うんです、なんだか私が少し寂しくなっちゃって」




頬を染めた千鶴に言われようも無い愛しさがこみ上げる。



そのままギュッと抱きしめる。




「あ、あの!千景さん?」




慌てたように暴れる千鶴をさらにきつく抱きしめて言う。



「お前の言うこともあながち間違ってはいないな。丁度俺も思っていた所だ。千鶴は俺のものであって子供たちのものでは無い。たとえ子供にでもお前をくれてやる気なんてさらさらないからな」



「千景さん…」



「しかし…今はまだ、子供たちに千鶴を貸し出してやろう。あくまでも貸し出しだ」



我ながらに情けない言い分だとは思っている。


でも、それほどにかけがえのない存在。



「千景さんったら…」




「今日、一日中言い出せなかったのだが、明日どこかに出かけないか?子守は天霧に頼んだ」




「そんな!天霧さんに申し訳ないです」




「いいんだ。俺が、お前と出かけたかったんだからな」




そう言うと千鶴は俺を見上げて笑う。



「なんですか?その言い分。千景さんもあの子たちと同じ子供みたいです」



「な!」




そんな反応をみてケラケラと笑う千鶴に仕返しがしてやりたくて不意打ちに唇を落とす。



「な!?」





「子供だったらこんなことはしないだろう?」




あたふたと慌てる愛する妻を見ていると俺がこいつに飽きることはなさそうだ、と思う。



「お前は永遠に俺のものだ」


Fin



風間さん…誰なんだこれは。
最近可愛くてしょうがない風間さん。可愛さがでない!難しい!

[戻る]
[TOPへ]

[しおり]






カスタマイズ