風間千景

□暖かな手
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体調がおかしいのはわかっていた。



それは熱くなる体からも、動かしづらくなった四肢からも。



でも休むわけにもいかない。




風間さんに迷惑をかけるわけにもいかない。



ついていけなければ置いていかれてしまうだろうから。




「おい。顔が赤いようだがどうした」




前を歩いていたはずの風間さんが私の前に立っていて驚いてしまう。




だが私もここで置いていかれるわけにはいかない。



「なんでもありません」



そう答えるが、風間さんはムッと眉を寄せ私を睨む。



「そんなことあるはずないだろう」



目の前にしゃがんだ風間さん。



私は彼の行動が何を意味するものか分からずただたちつくしてしまう。





「何をしている。早くしろ」



風間さんの目の促しによって、風間さんが私をおぶろうとしているのがわかった。




「大丈夫です。風間さんには迷惑をかけられません」




「ここで無用なやりとりをしている方が迷惑だ。早くしろ」



そうきつく言われてしまえば逆らうこともできない。



半ば強制的に背負われ風間さんは黙って歩き始めた。



足手まといになれば置いて行かれる、そう思っていた私は風間さんの行動が不思議で仕方ない。



「先を行く天霧から伝令があった。この先に廃小屋がある」




言葉少なだが、そこに向かっていると言うことなのだろう。


風間さんにおぶられ安心したのか一度に体のだるさに襲われる。



次第に力が抜けていくのもわかった。




その度に私を背負い直す風間さんだったが、文句を言われることもなく、ただ足早になるだけだ。



その行動で少しでも心配をしてくれていると思うとなんだか心があたたかくなる。




それからすぐのことだった。




小さな小屋に着いた私たち。



私を床に下ろすと、小屋の中をあれこれと見て回る風間さん。



どこからか布団を抱え戻ってきた。




「あまり埃を被っていないようだ。これで寝ろ」



私に布団をひいてくれ強引に寝かす。




その間も風間さんは囲炉裏に火を炊いたり、薪を拾いに行ったりとせわしなく働いている。



申し訳なくなりおきあがろうとするとすぐに制止される。




その繰り返し。




「早く治せ」



持って来ていた握り飯を二人で食べ、再び布団に横になると眠気が襲って来た。



風間さんは私の額に当てた手拭いを冷やしては乗せ、冷やしては乗せ、休むつもりはないらしい。



夜も更けたからか、辺りの気温は下がり私の体温も下がってしまった。




そんな私に気づいたのか風間さんは着ていた羽織を脱いだ。



それを無造作に私に被せる。



「早く寝ないから寒くなるんだ。いいから早く寝ろ」




呆れたように息をつく風間さんの姿に慈しみが込められているのに気がつき、次第に瞼が落ちて行った。


眠りに落ちる直前、ふと頭に触れた優しい掌。



暖かくて大きな手。



その手は私の頭を撫でてくれていた。




「ようやく起きたか」




次の日、私が目を覚ましたのは随分と日が昇ったあとのことだった。



絶えず火が焚いてあることから風間さんが寝ていなかったことを知り途端に申し訳なくなる。




「おやすみになられていませんよね。ごめんなさい」



しかし風間さんは私の体調が戻ったことだけを確認し、背を向けてしまう。




そして私は思い出し問うのだ。




「昨日の晩、私の頭を撫でていてくださいましたか?なんだか、とても温かい気持ちになって…」




対して風間さんは冷たい声色で言い放つ。



「なぜ俺がそんなことをいなければならないのだ。体調が戻ったなら早く支度をしろ。俺は川へ行ってくる」



そう言い残し去って行った彼の耳が赤かったのはきっと気のせい。





Fin



なんかへったくそな文ですね。



なんの意図があって書いたのかもわからないし。

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