気紛れ駄文

□堕天の刻《第五章》
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「……すごい…にぎやか?……だなぁ。」


フロア中を占める、騒々しい談笑や喧騒、たまに聞こえる罵倒や怒鳴り声に、はっきり言って一歩引いてしまう僕。

今日はお使いでいつもの自分の塔ではなく、恋愛や友情を担当している博愛天使の塔に訪れている……のだけど、再生天使の塔とのあまりの違いにその場に立ち尽くしてしまっていた。

どうやら、国際化…とかなんとかで担当地区を跨いだ恋愛が混乱を及ぼしている……らしい。

暫らく忙しそうに往来する天使を傍観していた僕だけど、しかし、いつまでもこうしている訳にもいかない。

とりあえず身近な人を捕まえて道を教えて貰おうと、偶然前を通りかかった天使に声をかけた。


「あ、あの!すみません、ちょっといいですか!」

「あらん、何かしらん?」


直後、もう少し相手を選べば良かったと後悔。

逞しい男性だと思った相手から返って来た、女性独特のイントネーションを持った返事に思わず硬直してしまった。


「あらぁ〜!貴方見ない子ねぇ。新人?白髪なんて珍しいわぁん♪」

「ふぇ!?」


動けないまま次の言葉を探していると、僕より遥かに背の高い彼(彼女?)は僕を確認するなりずずぃと顔を寄せてきた。
サングラスが鼻先に当たって、咄嗟に後ろに下がろうとすると、先に向こうに両手で頬を捕まれて更に顔を覗き込まれてしまう。


「目もパッチリしてるし、ん〜!羨ましい!しかも紅っていうのが更に素敵ねぇ!」


「アタシ可愛い子だぁい好きなのよぅ☆」と、性格とは裏腹に屈強なその腕で潰れそうな勢いで抱き締められて、漸く僕は自分を取り戻す。


「…ま、待って…!苦し…!苦しいですって!!」

「あらあら?ごめんなさいね〜!可愛い子を見るとついつい…☆」


つ、ついで圧迫死させられかける僕って……。


「アタシ、ジェリーっていうの!貴方とは初対面よね?こんな可愛い子忘れる訳ないもの!」

「…はぁ、どう…も?」


自分の容姿を奇異の目で見られる事は慣れていたけど、こんな反応をされるのは初めてでどう返していいのか分からず戸惑う。


「ぼ、僕は再生天使のアレンです。宜しく。」

「えぇ〜…、新人さんじゃないの?残念だわ〜。でも宜しくぅ♪で、その再生天使さんがどんな御用?」

「えっと、お使いを頼まれて書類を届けに来たんです。どちらに持っていけばいいですか?」


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