「よお大将、今日も早いな」
「おはよう、薬研。
悪いけど、そこの大根切ってくれる?」
「……わかった」
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「ちょっと不恰好にはなったけど、なんとか出来たね」
目の前には、焼き魚におつけもの、ご飯にお味噌汁。
お味噌汁の具は、白菜と何故か厚さのバラバラな大根が入っている。
「すまん、大将」
「いいよ。誰もが初めからうまく出来るわけじゃないし、また今度頑張ればいいよ」
そう言って薬研の頭を撫でると、俯いたままの薬研はコクリと頷いた。
「それにしても、流石に20人分はキツいな。
そろそろ、料理の得意な子が来てくれると嬉しいんだけど」
「燭台切光忠か」
燭台切?
「薬研、その子は本当に料理が出来るの?燭台切れても意味ないんだけど……」
「ああ、名前はアレだが、燭台切の前の主は伊達政宗だからな。多分、大丈夫だと思うぜ」
伊達政宗か……。確か史実では料理が好きで良く作ってたーーみたいな事が書いてあったっけ。
そんな人の刀なら料理が得意でもおかしくないかもね。
「まぁ、薬研がそう言うなら期待しとくよ。
さて、じゃあ皆を起こして朝御飯にしようか」
「ああ」
私がこの本丸に来て一月、こんなやり取りが普通になりつつあった。